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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている

02-7.

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「はあ!?」

 ブラッドは信じられないと言わんばかりの声をあげる。

 それから先ほどまでは大人しく頭を撫ぜられていたとは思えない表情を浮かべ、アルバートの胸倉を掴む手に力が入る。

「部下に気を遣えって言ってんだよ!!」

 第二騎士団は仲が良い。

 王都の警備が主な仕事である為、命のやり取りを多くしないことも理由の一つだろうが、比較的に温厚な性格の騎士たちが集まっている。

 その影響もあるのだろうか。

 用事がなくとも執務室の出入りが激しい。

 仕事中に堂々とキスをすることを容認してしまえば、部下たちに目撃される状況も増えることは簡単に想像できた。

「気を遣う?」

 アルバートは眉間に皺を寄せながら、聞き返す。

「必要か?」

「必要だろ。お前。団長だろ? 部下のことを考えろよ。頭の中まで筋肉で埋まっているわけじゃねえんだから」

 殴り掛かる気力もなくなったのだろうか。

 ブラッドは呆れたようなため息を零し、手を離した。

「お前に言ってもわかんねえよな。この鈍感野郎」

 ……こいつのことだから、筋肉で埋まってそうだな。

 言い争いをする気力もなくなるほどに身体が怠い。

 昨夜、遅くまで盛り上がりすぎた影響もあるのだろう。

 欠伸を堪えきれなかった。

「ブラッド。体調が悪いのか」

「お前のせいだよ。この童貞野郎。さっさと仕事に行け」

 ブラッドは舌打ちをする。

 それから腰辺りが重いのを隠すように立ち上がり、さっさと歩きだす。

「童貞ではないが」

「どうでも良い。さっさと仕事に行け!」

 休憩室でならば、少しは疲れが取れるだろうか。

 ブラッドはもう一度欠伸をする。

「ブラッドは?」

「俺は休憩してくる! コニー。仕事を進めておけよ」

 ブラッドは気怠そうにコニーに視線を送った。

 それに対し、コニーは顔を真っ赤にさせたまま、激しく頭を上下に振った。
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