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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている
02-4.
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面倒事には関わりたくないと言わんばかりに寝たふりを続けるブラッドの髪を、アルバートは優しく触り続ける。
優しく触れられているだけなのにもかかわらず、心が穏やかになる。
ウォルトの顔を見るだけで殴り掛かりそうな怒りを抑えつけられているような気分になるのは、なぜだろうか。
「別に。お前たちに用事はない」
機嫌の悪そうな声をあげた。
ウォルトは汚いものを見るような視線で執務室を眺めながら、眉を潜める。
「スターチス侯爵令息」
「なんでしょう」
「その手を離せ。それは僕のものだ」
不愉快で仕方がないと言わんばかりのウォルトの声に対し、ブラッドは寒気を感じた。
それは所有物のようブラッドを扱うウォルトに対してではない。
ウォルトが王子であることを忘れてしまったかのように、露骨な敵意を向けるアルバートが放つ威圧感に対し、抱いたものだった。
「ぼっ、僕は王子だぞ!? それなのにそんな目を向けていいと思っているのか!?」
ウォルトも向けられた敵意に気付いているのだろう。
怯えながらも権力を盾にして、強引に話を進めようとする。
……気持ちが悪い。
関わりたくはない相手だった。
キャロラインの婚約者だった時でさえも、ブラッドはウォルトのことが苦手だった。それでも、婚約関係に亀裂が入ることを恐れて、それなりの対応をしてきたつもりだった。
それを婚約破棄された後も求められるとは思ってもいなかった。
「触るなと言っているのがわからないのか!?」
癇癪を起したような声をあげる。
それに対し、騎士たちはなにもできなかった。
「従う理由がありませんが」
アルバートは呆れたような声で言った。
「ブラッドは俺の嫁です。陛下から正式に夫婦として認められていますので、殿下の命令であったとしても従う理由がありません」
アルバートの言葉に対し、ブラッドは顔が熱くなる。
……何を言ってやがる。
否定をしたいが、事実である。
優しく触れられているだけなのにもかかわらず、心が穏やかになる。
ウォルトの顔を見るだけで殴り掛かりそうな怒りを抑えつけられているような気分になるのは、なぜだろうか。
「別に。お前たちに用事はない」
機嫌の悪そうな声をあげた。
ウォルトは汚いものを見るような視線で執務室を眺めながら、眉を潜める。
「スターチス侯爵令息」
「なんでしょう」
「その手を離せ。それは僕のものだ」
不愉快で仕方がないと言わんばかりのウォルトの声に対し、ブラッドは寒気を感じた。
それは所有物のようブラッドを扱うウォルトに対してではない。
ウォルトが王子であることを忘れてしまったかのように、露骨な敵意を向けるアルバートが放つ威圧感に対し、抱いたものだった。
「ぼっ、僕は王子だぞ!? それなのにそんな目を向けていいと思っているのか!?」
ウォルトも向けられた敵意に気付いているのだろう。
怯えながらも権力を盾にして、強引に話を進めようとする。
……気持ちが悪い。
関わりたくはない相手だった。
キャロラインの婚約者だった時でさえも、ブラッドはウォルトのことが苦手だった。それでも、婚約関係に亀裂が入ることを恐れて、それなりの対応をしてきたつもりだった。
それを婚約破棄された後も求められるとは思ってもいなかった。
「触るなと言っているのがわからないのか!?」
癇癪を起したような声をあげる。
それに対し、騎士たちはなにもできなかった。
「従う理由がありませんが」
アルバートは呆れたような声で言った。
「ブラッドは俺の嫁です。陛下から正式に夫婦として認められていますので、殿下の命令であったとしても従う理由がありません」
アルバートの言葉に対し、ブラッドは顔が熱くなる。
……何を言ってやがる。
否定をしたいが、事実である。
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