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第二話 『悪役令息の妹』の元婚約者に追われている
02-1.悪役令息は職場復帰をする
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* * *
「副団長! 復帰、おめでとうございます!!」
「おかえりなさい! 副団長!」
「待っていました!!」
第二騎士団に与えられている執務室に足を踏み入れた瞬間、部屋の中で待機をしていたらしい騎士たちの声が響き渡る。
本日、仕事の予定が入っている者たちが集まっていたようだ。
「二週間いなかっただけだろ」
それに対し、ブラッドはバカにするように笑った。
素っ気ない対応をされたのにもかかわらず、騎士たちは好き放題に騒いでいる。
「本当に全員で待っていたんですよ。副団長」
露骨な愛想笑いを浮かべながら、ブラッドに声をかける騎士、コリーの顔には隈が出来ている。
……冗談じゃないな。
今にも倒れそうな顔色を横目で確認したブラッドの視線は、ブラッドが使っている机の上に山のようになっている書類に向けられた。
……気が遠くなる。
休養をする為に休んでいたわけではない。
伯爵家の存続をかけて大量の書類を処理したり、親しくしている貴族たちに根回しをしたりとブラッドも奔走していた。正直なところ、書類を見たくはないほどに疲れている。
「……そうだろうな」
ため息を零したくなる。
ブラッドは当然のような顔をしながら、一緒に執務室に入ってきたアルバートを見上げる。
「アルバート。仕事を溜めるんじゃねえって言ったよな?」
「わざとではない」
「知るか。時間内にできねえなら残業してまで終わらせろ」
ブラッドは舌打ちをする。
それから、アルバートの返事を待たずに椅子に座る。視界の邪魔になるほどに積まれた書類を見つめ、遠い目をしてしまうのは仕方がないだろう。
「いやー、ほんとに、すみません。副団長」
コリーは申し訳なさそうな声を上げる。
それに対し、ブラッドは気の抜けたようなため息を吐き出した。
「副団長! 復帰、おめでとうございます!!」
「おかえりなさい! 副団長!」
「待っていました!!」
第二騎士団に与えられている執務室に足を踏み入れた瞬間、部屋の中で待機をしていたらしい騎士たちの声が響き渡る。
本日、仕事の予定が入っている者たちが集まっていたようだ。
「二週間いなかっただけだろ」
それに対し、ブラッドはバカにするように笑った。
素っ気ない対応をされたのにもかかわらず、騎士たちは好き放題に騒いでいる。
「本当に全員で待っていたんですよ。副団長」
露骨な愛想笑いを浮かべながら、ブラッドに声をかける騎士、コリーの顔には隈が出来ている。
……冗談じゃないな。
今にも倒れそうな顔色を横目で確認したブラッドの視線は、ブラッドが使っている机の上に山のようになっている書類に向けられた。
……気が遠くなる。
休養をする為に休んでいたわけではない。
伯爵家の存続をかけて大量の書類を処理したり、親しくしている貴族たちに根回しをしたりとブラッドも奔走していた。正直なところ、書類を見たくはないほどに疲れている。
「……そうだろうな」
ため息を零したくなる。
ブラッドは当然のような顔をしながら、一緒に執務室に入ってきたアルバートを見上げる。
「アルバート。仕事を溜めるんじゃねえって言ったよな?」
「わざとではない」
「知るか。時間内にできねえなら残業してまで終わらせろ」
ブラッドは舌打ちをする。
それから、アルバートの返事を待たずに椅子に座る。視界の邪魔になるほどに積まれた書類を見つめ、遠い目をしてしまうのは仕方がないだろう。
「いやー、ほんとに、すみません。副団長」
コリーは申し訳なさそうな声を上げる。
それに対し、ブラッドは気の抜けたようなため息を吐き出した。
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