1 / 98
第一話 ブラッド・カザニアは恋をしている
01-1.不憫な悪役令息は両親に売り飛ばされた
しおりを挟む
カザニア伯爵家の長女、キャロラインが婚約を破棄された。
新聞の見出しを飾る文字を許すわけにはいかないと言わんばかりの勢いで、彼、ブラッド・カザニアは新聞を握り潰した。
先日、王族主催のお茶会にて勃発した婚約破棄騒動が世間の笑いものになっている。晒し者にするかのように婚約破棄を告げられた悲しみに涙を流すキャロラインの写真が載せられているのは、元婚約者の正当性を主張する為だろう。
「父上はなにをしているんだ! なぜ、キャロラインが侮辱をされ続けているのを黙っているんだ!!」
ブラッドの怒りが籠った声に対し、忙しなく動いていた使用人たちが振り返る。怯えている様子を見せる者がいないのは、妹が侮辱され続けている現状を我慢できるような性格ではないことを誰もがよく理解をしているからだ。
気持ちは痛いほどにわかると言わんばかりの顔をする使用人たちが驚いた表情を浮かべた。それから、何かあったのだろうと察した表情を作り、一斉に大広間から離れていく。
「ブラッド坊ちゃま」
明らかに疲れ切った表情を隠すこともせず、ブラッドに声をかけたのは執事長だった。
「伯爵様が到着されました」
本来、伯爵領内にある本邸で働いている執事長が、首都にある別宅まで来ているのはブラッドの両親である伯爵夫妻が到着したことを意味する。
「……ようやくか」
ブラッドは待っていたと言わんばかりの表情のまま、立ち上がる。
キャロラインが一方的な婚約破棄を告げられたのが二週間前だ。この二週間、ブラッドは伯爵領の経営が悪化していくことを防ぐために奔走し続けた。
事情を伏せつつも、仕事の休暇を願い出たのは伯爵家の為だった。
その多忙な生活も一段落することだろう。
「父上。母上。二週間もどうしていたんですか? キャロラインがどんな目に遭ったか、わかっていたことでしょう!?」
ブラッドは大広間に足を踏み入れた両親の元に駆け寄りながら、文句を口にする。
「はぁ。うるさい。大きな声を出すなと何度も言ってきただろう」
それに対し、父親であるコーディ・カザニアは大げさなため息を零した。
馬車で移動したことが疲れたのか。
用意させた椅子に座り、足を組む。
それから腹を括ったような表情でブラッドを見つめた。
新聞の見出しを飾る文字を許すわけにはいかないと言わんばかりの勢いで、彼、ブラッド・カザニアは新聞を握り潰した。
先日、王族主催のお茶会にて勃発した婚約破棄騒動が世間の笑いものになっている。晒し者にするかのように婚約破棄を告げられた悲しみに涙を流すキャロラインの写真が載せられているのは、元婚約者の正当性を主張する為だろう。
「父上はなにをしているんだ! なぜ、キャロラインが侮辱をされ続けているのを黙っているんだ!!」
ブラッドの怒りが籠った声に対し、忙しなく動いていた使用人たちが振り返る。怯えている様子を見せる者がいないのは、妹が侮辱され続けている現状を我慢できるような性格ではないことを誰もがよく理解をしているからだ。
気持ちは痛いほどにわかると言わんばかりの顔をする使用人たちが驚いた表情を浮かべた。それから、何かあったのだろうと察した表情を作り、一斉に大広間から離れていく。
「ブラッド坊ちゃま」
明らかに疲れ切った表情を隠すこともせず、ブラッドに声をかけたのは執事長だった。
「伯爵様が到着されました」
本来、伯爵領内にある本邸で働いている執事長が、首都にある別宅まで来ているのはブラッドの両親である伯爵夫妻が到着したことを意味する。
「……ようやくか」
ブラッドは待っていたと言わんばかりの表情のまま、立ち上がる。
キャロラインが一方的な婚約破棄を告げられたのが二週間前だ。この二週間、ブラッドは伯爵領の経営が悪化していくことを防ぐために奔走し続けた。
事情を伏せつつも、仕事の休暇を願い出たのは伯爵家の為だった。
その多忙な生活も一段落することだろう。
「父上。母上。二週間もどうしていたんですか? キャロラインがどんな目に遭ったか、わかっていたことでしょう!?」
ブラッドは大広間に足を踏み入れた両親の元に駆け寄りながら、文句を口にする。
「はぁ。うるさい。大きな声を出すなと何度も言ってきただろう」
それに対し、父親であるコーディ・カザニアは大げさなため息を零した。
馬車で移動したことが疲れたのか。
用意させた椅子に座り、足を組む。
それから腹を括ったような表情でブラッドを見つめた。
157
お気に入りに追加
751
あなたにおすすめの小説

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる