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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
08-6.
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「……なぜ?」
メルヴィンは恨みを買った覚えがなかった。
婚約者に対する冷遇は非難されて当然だ。しかし、大公子であるメルヴィンに平手打ちをしようとするとは思えなかった。
「あら、自覚がありませんの?」
アデラインは困ったような顔をして見せた。
「私のお友達の多くはメルヴィン様のことを恨んでおいでですのよ」
「それはアデラインに冷たくしていたからか?」
「半分は正解ですわね」
アデラインの交友関係は広い。
それは王立魔法学院在学時に培ってきたものが大半ではあるものの、卒業後も交友関係は広がり続けてきた。
「メルヴィン様のことを好いていらした女性たちは、私のお友達ですのよ」
アデラインは嫉妬心を隠さなかった。
メルヴィンに好かれていないと思っていた頃もそれは変わらない。
婚約者を冷遇しているのならば、大公妃に選ばれる可能性は自分にもあるはずだと信じて疑わなかった自信家の女性たちは、メルヴィンを手に入れる為に手段を選ばなかった。
その一つがアデラインの価値を貶めることだった。
アデラインは女性たちの手段を逆手に取り、利用した。
メルヴィンに向けられていた恋心をアデラインに対する憧れにすり替え、友人という名目の取り巻きにすることにより、メルヴィンに擦り寄ろうとしないようにしていたのだ。
まさか、それが仇となるとは思ってもいなかった。
「私がご令嬢たちの憧れであることも存じていなかったのでしょう?」
「……噂は聞いたことがあった。だが、事実とは知らなかったな」
「ええ、そうでしょうね。女性を避けるのにはちょうどいいと思っていたのでしょう? 私もメルヴィン様を思ってしていた行動が仇になるとは思っておりませんでしたもの」
アデラインは事実の一部のみを口にする。
都合の悪いことを言葉にする必要はない。
「ご自分で対策を練ってくださいませ。私も対処をいたしますが、討伐任務に参加をしている間にどのような噂に変わっているのか、見当がつきませんのよ」
アデラインの言葉に対し、メルヴィンは力なく頷くことしかできなかった。
噂は広まるのが早い。あっという間に広まり、事実を捻じ曲げてしまう。それを防ぐ為の時間は二人にはなかった。
メルヴィンは恨みを買った覚えがなかった。
婚約者に対する冷遇は非難されて当然だ。しかし、大公子であるメルヴィンに平手打ちをしようとするとは思えなかった。
「あら、自覚がありませんの?」
アデラインは困ったような顔をして見せた。
「私のお友達の多くはメルヴィン様のことを恨んでおいでですのよ」
「それはアデラインに冷たくしていたからか?」
「半分は正解ですわね」
アデラインの交友関係は広い。
それは王立魔法学院在学時に培ってきたものが大半ではあるものの、卒業後も交友関係は広がり続けてきた。
「メルヴィン様のことを好いていらした女性たちは、私のお友達ですのよ」
アデラインは嫉妬心を隠さなかった。
メルヴィンに好かれていないと思っていた頃もそれは変わらない。
婚約者を冷遇しているのならば、大公妃に選ばれる可能性は自分にもあるはずだと信じて疑わなかった自信家の女性たちは、メルヴィンを手に入れる為に手段を選ばなかった。
その一つがアデラインの価値を貶めることだった。
アデラインは女性たちの手段を逆手に取り、利用した。
メルヴィンに向けられていた恋心をアデラインに対する憧れにすり替え、友人という名目の取り巻きにすることにより、メルヴィンに擦り寄ろうとしないようにしていたのだ。
まさか、それが仇となるとは思ってもいなかった。
「私がご令嬢たちの憧れであることも存じていなかったのでしょう?」
「……噂は聞いたことがあった。だが、事実とは知らなかったな」
「ええ、そうでしょうね。女性を避けるのにはちょうどいいと思っていたのでしょう? 私もメルヴィン様を思ってしていた行動が仇になるとは思っておりませんでしたもの」
アデラインは事実の一部のみを口にする。
都合の悪いことを言葉にする必要はない。
「ご自分で対策を練ってくださいませ。私も対処をいたしますが、討伐任務に参加をしている間にどのような噂に変わっているのか、見当がつきませんのよ」
アデラインの言葉に対し、メルヴィンは力なく頷くことしかできなかった。
噂は広まるのが早い。あっという間に広まり、事実を捻じ曲げてしまう。それを防ぐ為の時間は二人にはなかった。
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