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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
06-36.
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「かまいませんわ」
アデラインは笑顔で肯定した。
「私、意外と頑固者ですのよ。メルヴィン様が困るような我儘を言って、困らせて、強引に私の意思を通すような女ですもの」
「……知っている。俺がアデラインの我儘に弱いこともな」
「それはなによりですわ。ですから、お互い様だと思いませんか?」
アデラインはメルヴィンの思い通りに生きることはできない。
男装を辞めることも、騎士を辞退することもない。エステルの為ならば、危険だとわかっている場所でも向かわずにはいられない。
「私もメルヴィン様の意思をすべて尊重することができませんもの」
アデラインの言葉に対し、メルヴィンはなにも言わなかった。
無言で肯定をした。
それに対し、アデラインは申し訳なさそうな顔をした。
「私が子を宿せば、討伐任務を辞退すると考えたのでしょう?」
「……気づいていたのか」
「ええ。心当たりはそれくらいですもの」
アデラインはメルヴィンを抱きしめるのを止め、少しだけ距離をとる。
困惑を隠せないメルヴィンの顔をしっかりと見つめ、申し訳なさそうな顔をしてみせた。
「ごめんなさいね」
アデラインはメルヴィンから目を逸らす。
「私は義妹を見捨てることだけはいたしませんのよ」
それだけは譲れなかった。
……理解はされないでしょうね。
血の繋がりのない義妹を大切にしているのは、理解をされないことが多い。聖女とはいえ、侯爵家にふさわしくない振る舞いのエステルは社交界では嫌われている。その恩恵だけを手に入れようと企む者も少なくはない。
アデラインはそれらからエステルを守ってきた。
今後もそうしていくつもりだった。
「なぜ、それほどまでに聖女を大切にしているんだ。アデラインが危険な目に遭う必要はないだろう。彼女は護衛騎士に守られるはずなのだから」
「……ええ。そのくらいのことはわかっておりますわ」
メルヴィンの言葉は間違いではない。
だからこそ、アデラインは視線を逸らしたまま、答えた。
「私の自己満足ですわ。あの子を守ると決めたのは、私ですもの」
アデラインの言葉は本音だった。しかし、すべてを打ち明けたわけではない。
アデラインは笑顔で肯定した。
「私、意外と頑固者ですのよ。メルヴィン様が困るような我儘を言って、困らせて、強引に私の意思を通すような女ですもの」
「……知っている。俺がアデラインの我儘に弱いこともな」
「それはなによりですわ。ですから、お互い様だと思いませんか?」
アデラインはメルヴィンの思い通りに生きることはできない。
男装を辞めることも、騎士を辞退することもない。エステルの為ならば、危険だとわかっている場所でも向かわずにはいられない。
「私もメルヴィン様の意思をすべて尊重することができませんもの」
アデラインの言葉に対し、メルヴィンはなにも言わなかった。
無言で肯定をした。
それに対し、アデラインは申し訳なさそうな顔をした。
「私が子を宿せば、討伐任務を辞退すると考えたのでしょう?」
「……気づいていたのか」
「ええ。心当たりはそれくらいですもの」
アデラインはメルヴィンを抱きしめるのを止め、少しだけ距離をとる。
困惑を隠せないメルヴィンの顔をしっかりと見つめ、申し訳なさそうな顔をしてみせた。
「ごめんなさいね」
アデラインはメルヴィンから目を逸らす。
「私は義妹を見捨てることだけはいたしませんのよ」
それだけは譲れなかった。
……理解はされないでしょうね。
血の繋がりのない義妹を大切にしているのは、理解をされないことが多い。聖女とはいえ、侯爵家にふさわしくない振る舞いのエステルは社交界では嫌われている。その恩恵だけを手に入れようと企む者も少なくはない。
アデラインはそれらからエステルを守ってきた。
今後もそうしていくつもりだった。
「なぜ、それほどまでに聖女を大切にしているんだ。アデラインが危険な目に遭う必要はないだろう。彼女は護衛騎士に守られるはずなのだから」
「……ええ。そのくらいのことはわかっておりますわ」
メルヴィンの言葉は間違いではない。
だからこそ、アデラインは視線を逸らしたまま、答えた。
「私の自己満足ですわ。あの子を守ると決めたのは、私ですもの」
アデラインの言葉は本音だった。しかし、すべてを打ち明けたわけではない。
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