男装の悪役令嬢は、女嫌いで有名な騎士団長から執着されて逃げられない

佐倉海斗

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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

06-27.

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 メルヴィンの隣に並び、メルヴィンと言葉を交わすだけでアデラインの心は満たされている。その上、大公家が代々贔屓にしている鍛冶職人を紹介してもらえたのは、純粋に嬉しかった。

「触れ合いたいという意味だ」

「触れ合い……? 私の顔に触るのは、そのような意味がございましたの?」

 アデラインは瞬きをした。

 メルヴィンの遠回しの言葉では、アデラインにメルヴィンの要望の意図は伝わらない。

「いや。顔だけじゃない。アデラインのすべてを触りたいし、舐めたいし、気持ち良くなっているアデラインの姿も見てみたい」

 メルヴィンは言葉を選んでいる余裕を捨てた。

「君のすべてを知りたいんだ」

 メルヴィンの獣のような目から視線を逸らせない。

「俺の子を孕んでほしい」

 メルヴィンの言葉の意図は、アデラインに伝わった。

 アデラインの顔は火が付いたように真っ赤に染まり、視線はきょろきょろと落ち着きなく動いている。メルヴィンの発言が漏れていないか、気にしているのだろうか。それとも、逃げ道を探しているのだろうか。どちらにしても、動揺を隠せていないのは確かである。

「え、あ、ええっと」

 アデラインはなにかを言わなくてはいけないと、必死に口を開いた。

「こっ、婚前交渉はよろしくありませんわ!」

「そうか。では、逃げてはどうだ?」

「敵前逃亡を勧めるなんてメルヴィン様らしくなくってよ!」

 必死に考え抜いた結果、貴族の淑女としてもっともらしい言葉を口にした。

 寝室に案内をされる前に釘を刺しておくべきだった。

 ……力があまり入りませんし。逃げようとしても、すぐに捕まりますわ。

 既に体の力が抜けており、走って逃げることは不可能である。頭がぼんやりとするのは治りつつあるものの、明らかに手の甲に付けた香水による影響だった。

 ……あの香水、なにか入っておりましたのね!?

 メルヴィンの衝撃的な発言により、目が覚めた気分だった。

 イランイランに似せられた甘い香りは寝室中に広がっている。メルヴィンには影響が出ていないようだが、それは吸い込んだ量が違うからなのかもしれない。

「悪いな。好きな女性を前にして我慢できるほど紳士ではないんだ」

 メルヴィンはあくどい笑みを浮かべて、そう言い切った。

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