男装の悪役令嬢は、女嫌いで有名な騎士団長から執着されて逃げられない

佐倉海斗

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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

06-22.※

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「あら。素敵。いい香りですわ。イランイランかしら?」

 アデラインはメルヴィンに差し出された香水の匂いを嗅ぐ。

 リラックス効果や女性の魅力を高める香りとして有名なイランイランが使われているのだろうか。

 数滴、手の甲に出しただけだというのにもかかわらず、香水の甘い香りは部屋中に広まっていく。

「好みか?」

 メルヴィンの問いかけに対し、アデラインは笑顔で肯定した。

「ええ。とっても、素敵な香りですわね」

「それはよかった。両手に塗るとしばらく匂いが続くようだ」

「そうなのですか。それは嬉しいですわ」

 アデラインはメルヴィンの言葉を疑うことなく、手の甲についている香水を両手の甲に広げていく。

 数滴でしばらく楽しめるのだから、追加をしなくても大丈夫だろう。そう判断したのか、メルヴィンは香水瓶の蓋を閉め、棚の上に戻した。

「他のものも素敵な見た目ですわね」

 アデラインは他の香水瓶にも目を向けた。

「ですが、後日に試させていただきますわ。香りが混ざってしまいますものね」

「そうだな。そうした方が良いだろう」

「メルヴィン様。素敵なプレゼントをありがとうございます。私、香水は詳しくないのですけども、これはとても素敵なものですわね」

 アデラインは頬を赤らめながら言った。

 部屋に充満する甘い香りは思考を蕩けさせていく。それは強力な効果を持つものではなかったが、即効性の確認されているものだった。

「気になるところはありませんわ。とても素敵なお部屋ですもの」

 アデラインの笑顔が緩む。

 いつものような貴族の令嬢らしくなくてはならないと気の張った笑顔ではなく、子どものように幼い笑顔だった。それはアデラインの感情のままに表現されている笑顔なのだろう。

 メルヴィンはアデラインの腰に手を回す。

「んっ。……変なところを触らないでくださいませ」

 アデラインは反射的に甲高い声をあげてしまった。

 それを隠そうとするような言葉を続けたものの、メルヴィンには効果はなかったようだ。

 メルヴィンは獣のような目でアデラインを見下ろしている。
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