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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
06-16.
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真実を告げても、メルヴィンならば喜んでくれるはずだと根拠のない自信と共に伝える勇気がわいてきた。
「いえ。醜いことはありませんわ」
アデラインはメルヴィンの肩に頭を寄せる。
「ごめんなさいね。私、まったく気づくことができませんでしたわ」
先に謝罪の言葉を口にした。
話の種になりやすいエステルの話をするのではなく、するべきだったのはアデラインがなにを思っていたのかだった。それに気づいてしまった。
「本音で対話をしていただけているのに、秘密を秘密のままにするのはいけないことでしょう?」
アデラインがメルヴィンに寄り添っても、メルヴィンは動じない。
あいかわらず、視線はまっすぐにアデラインに向けられていた。
……仲睦まじい婚約者のように見えるかしら。
大公邸に用意されているアデラインの自室で繰り広げられる会話を傍聴している者がいる。メルヴィンは油断をしているのか、それとも、処罰する価値のない会話だと判断しているのか、わからない。
……会話を聞くような無粋な人にはわからないでしょうけども。
傍聴をしているのならば、聞かせてやればいい。
アデラインは軍の機密情報を口にしているわけではない。アデラインの本音を口にしているだけだ。
それは大公家の人間に知られて厄介なことを引き起こすようなものではない。
……結婚後には、躾をしてさしあげなければ。
主人の会話を盗み聞きするのはあってはならない。
会話を文書として残す必要があるのならば、信頼のおける執事を同席させて会話を記録させるはずである。
それをしていないということは、外で聞き耳を立てているのはメルヴィンの指示ではなく、独断によるものと判断しても間違いではないだろう。
「メルヴィン様にお会いをしたかったのも、男装をするきっかけでしたのよ」
アデラインは語る。
二度と口にすることはないだろうと決めていた恋する乙女の本音を口にする。
「俺に?」
「ええ。女性がお嫌いだと思っておりましたもの。それならば、男性の恰好をすれば傍にいられるのではないかと思いましたの」
「それはずいぶんと思い切ったことをしたな」
メルヴィンは興味深そうに話を聞いていた。
「いえ。醜いことはありませんわ」
アデラインはメルヴィンの肩に頭を寄せる。
「ごめんなさいね。私、まったく気づくことができませんでしたわ」
先に謝罪の言葉を口にした。
話の種になりやすいエステルの話をするのではなく、するべきだったのはアデラインがなにを思っていたのかだった。それに気づいてしまった。
「本音で対話をしていただけているのに、秘密を秘密のままにするのはいけないことでしょう?」
アデラインがメルヴィンに寄り添っても、メルヴィンは動じない。
あいかわらず、視線はまっすぐにアデラインに向けられていた。
……仲睦まじい婚約者のように見えるかしら。
大公邸に用意されているアデラインの自室で繰り広げられる会話を傍聴している者がいる。メルヴィンは油断をしているのか、それとも、処罰する価値のない会話だと判断しているのか、わからない。
……会話を聞くような無粋な人にはわからないでしょうけども。
傍聴をしているのならば、聞かせてやればいい。
アデラインは軍の機密情報を口にしているわけではない。アデラインの本音を口にしているだけだ。
それは大公家の人間に知られて厄介なことを引き起こすようなものではない。
……結婚後には、躾をしてさしあげなければ。
主人の会話を盗み聞きするのはあってはならない。
会話を文書として残す必要があるのならば、信頼のおける執事を同席させて会話を記録させるはずである。
それをしていないということは、外で聞き耳を立てているのはメルヴィンの指示ではなく、独断によるものと判断しても間違いではないだろう。
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アデラインは語る。
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「俺に?」
「ええ。女性がお嫌いだと思っておりましたもの。それならば、男性の恰好をすれば傍にいられるのではないかと思いましたの」
「それはずいぶんと思い切ったことをしたな」
メルヴィンは興味深そうに話を聞いていた。
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