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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

06-14.

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「いつでもいいのか? 希望はないのか?」

「ええ。メルヴィン様に愛されていると知ることができましたので。退屈で苦痛な日々にはならないでしょうから」

 アデラインが描いていた地獄のような日々は来ないだろう。

 お飾りだけの大公妃になる未来は遠のいた。

 それならば、アデラインは結婚に怯える必要はない。

「そのような結婚になると思っていたのか?」

 メルヴィンは不安げに問いかけた。

 それもすべて、メルヴィンが婚約者に対して心のない対応をし続けた結果だと理解をしつつも、言葉にされてしまうと不安でしかなかった。

「待遇は改善していただけないでしょうと覚悟をしておりました」

 アデラインは迷うことなく返答をした。

「ですが、メルヴィン様の想いを知った今となっては、なにも心配をしておりません。メルヴィン様の妻として相応しい振る舞いに努めますわ」

 アデラインは公私ともに支える自信があった。

「どうかメルヴィン様のお好きなようにしてくださいませ。私は、メルヴィン様のお決めになられたことに反対などいたしませんから」

 アデラインは結婚を急かすようなことはしない。

 婚約期間を伸ばしていたのはメルヴィンの意向だ。それならば、結婚もメルヴィンのしたい時期にすればいい。

 投げやりのような回答ではあったが、メルヴィンにはそれでよかったようだ。

「そうか」

 メルヴィンは相槌を打つ。

「アデラインの気持ちはよくわかった」

 メルヴィンはなにを考えているのだろうか。

 少なくとも、アデラインの語った思いを否定することはないだろう。

「それでも、男装し続ける理由は義妹の為か?」

 メルヴィンの問いかけに対し、アデラインは視線を逸らした。

 ……メルヴィン様の傍にいる為だったと伝えたら、どのような反応を見せてくれるのでしょうか。

 本音を口にしても、メルヴィンは快く受け止めてくれるだろう。

 しかし、素っ気ない対応をされていた日々を思い出してしまうと、勇気がでなかった。男装をしてでも傍にいなたかったのだと打ち明けてしまいたい気持ちを心の奥底にしまい込む。

「ええ。そうでなければ、危険な任務に同行させていただけないでしょうから」

 アデラインは言い訳を口にした。
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