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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
06-11.
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「私の宝物ですもの」
アデラインはメルヴィンが書いたものではないと気づきつつも、送られてきた手紙を丁寧に保管してある。
スコールズ大公家の使用人が書いたものであったとしても、アデラインの誕生日を祝いたい気持ちを抱いているのは十分すぎるほどに伝わってきたからだ。
「いつの日か、代筆者の方に会わせてくださいませ。私、きっと仲良くなれると思いますの」
アデラインは身に付けることもできない安物のアクセサリーを思い出す。
誕生日の手紙と共に送られてきたアクセサリーは、城下町で購入したのだろうか。侯爵家の令嬢が身に付けるのには不釣り合いな安物のネックレスは、今も宝石箱の底に眠っている。
それは手紙の送り主がアデラインを思いながら、選んだものだったのだろう。
代筆者にすべてを一任していると隠そうともしていなかった。
「……不快ではなかったか?」
メルヴィンは申し訳なさそうに問いかける。
それに対し、アデラインは優しく微笑んだ。
「メルヴィン様には疎まれていると存じておりましたもの。それでも、スコールズ大公家にも、私を思ってくださる方もいらっしゃると知れたことは幸いでしたわ」
アデラインは前向きに物事をとらえるようにしていた。
そうしなければ、途中で心が折れていたことだろう。
「ですから、私を励ましてくださった彼女に、お礼を伝えたいと思っておりましたのよ」
アデラインの言葉を聞き、メルヴィンはなにを思っていたのだろうか。
「次の誕生日からは俺が書くから」
「それは無理ではないかしら」
「なぜ?」
メルヴィンはアデラインを抱きしめながら、問いかける。
……本当にわかっていらっしゃらないのかしら。
メルヴィンは婚約者に対して無関心であった。
それが一転して、手放さないようにしようと抱きしめているのは、周囲の人から見れば人が変わったように思われることだろう。
……ここまで変わられるなんて。不思議ですわね。
おかしくなってしまったと精密検査を勧める人も現れるかもしれない。
アデラインも事情を知っていなければ、神官に検査をしてもらうように勧めていたことだろう。
アデラインはメルヴィンが書いたものではないと気づきつつも、送られてきた手紙を丁寧に保管してある。
スコールズ大公家の使用人が書いたものであったとしても、アデラインの誕生日を祝いたい気持ちを抱いているのは十分すぎるほどに伝わってきたからだ。
「いつの日か、代筆者の方に会わせてくださいませ。私、きっと仲良くなれると思いますの」
アデラインは身に付けることもできない安物のアクセサリーを思い出す。
誕生日の手紙と共に送られてきたアクセサリーは、城下町で購入したのだろうか。侯爵家の令嬢が身に付けるのには不釣り合いな安物のネックレスは、今も宝石箱の底に眠っている。
それは手紙の送り主がアデラインを思いながら、選んだものだったのだろう。
代筆者にすべてを一任していると隠そうともしていなかった。
「……不快ではなかったか?」
メルヴィンは申し訳なさそうに問いかける。
それに対し、アデラインは優しく微笑んだ。
「メルヴィン様には疎まれていると存じておりましたもの。それでも、スコールズ大公家にも、私を思ってくださる方もいらっしゃると知れたことは幸いでしたわ」
アデラインは前向きに物事をとらえるようにしていた。
そうしなければ、途中で心が折れていたことだろう。
「ですから、私を励ましてくださった彼女に、お礼を伝えたいと思っておりましたのよ」
アデラインの言葉を聞き、メルヴィンはなにを思っていたのだろうか。
「次の誕生日からは俺が書くから」
「それは無理ではないかしら」
「なぜ?」
メルヴィンはアデラインを抱きしめながら、問いかける。
……本当にわかっていらっしゃらないのかしら。
メルヴィンは婚約者に対して無関心であった。
それが一転して、手放さないようにしようと抱きしめているのは、周囲の人から見れば人が変わったように思われることだろう。
……ここまで変わられるなんて。不思議ですわね。
おかしくなってしまったと精密検査を勧める人も現れるかもしれない。
アデラインも事情を知っていなければ、神官に検査をしてもらうように勧めていたことだろう。
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