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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

05-7.

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「聖女様に好かれるというのも大変ですね」

 エリーの言葉を聞き、アデラインは苦笑した。

 ……エステルのことが好きな王子たちが心配だわ。

 前世の婚約者だったセドリックのことを思い出す。エステルの同級生であり、幼馴染として育ったセドリックは一途にエステルに恋をしている。

 しかし、セドリックの恋は未だに成就していない。

 エステルの恋人になる条件は、アデラインとの決闘に勝つことである。

 その条件を掲げたのはエステルだ。最低限の条件すら突破できないような相手と恋をできる自信がないと言っていた姿は、聖女とは思えないものだった。

 ……とはいえ、手加減をしてあげるわけにはいきませんものね。

 アデラインはエステルのことを大切な家族だと思っている。

 それならば、義妹が決めた条件を守れないような男に差し出すわけにはいかない。

「暴走癖がなければ、かわいい子なのよ」

 アデラインの言葉を聞いて同意をするメイドは一人もいなかった。


* * *


 大急ぎで取り掛かられた準備の末、アデラインは侯爵邸の玄関の前に止められている大公家の馬車を見て、気が遠のきそうになった。

 ……本当にいらっしゃるとは思いもしませんでしたわ。

 広い中庭を馬車が走るのはいつものことである。

 王都での日常を過ごす為だけに建てられているとはいえ、侯爵邸は広い。敷地外に出るまでの間、主人たちを歩かせるわけにはいかない。その為、敷地内を馬車が通ることができるように整備されているのだ。

 ……冗談だと思っていましたのに。

 堂々と迎えに来たメルヴィンに対し、警戒心をあらわにしている使用人たちがいるのを咎めることさえもできなかった。

「メルヴィン様、よく迎えに来られましたわね」

「当然だろう。事前に使いを出しておいたからな」

「いえ、そういう話ではありませんわ。侯爵家の使用人に刺されるとは考えませんでしたの?」

 アデラインは問いかけてみたものの、実際にそのようなことが起きれば、メルヴィンに取り押さえられることになるだろう。もしかしたら、メルヴィンよりも先にアデラインが動くかもしれない。

「刺されるようなことはしたと自覚はある」

 メルヴィンの返答は意外なものだった。
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