男装の悪役令嬢は、女嫌いで有名な騎士団長から執着されて逃げられない

佐倉海斗

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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる

05-6.

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「初めて見ましたわ」

 アデラインは素直に感想を述べた。

 ……すぐに何着か、確保をしておくべきかしら。

 デザイナーは侯爵家で依頼しているところだろうか。

 しかし、メイドたちの様子がおかしい。まるで、エステルが手にしているドレスの存在を知らなかったかのようだ。

「そうでしょう! あたしがデザインをした最新のドレスです! お姉さまが着れば大流行間違いないですよ!」

 エステルはドレスを傍にいたメイドに渡す。

 渡されたメイドは大慌てで、そのドレスをアデラインの元に運んできた。

「まあ。多才な子ですわね」

 アデラインはエステルの奇行に驚かない。

 どうしようもなく、頭を抱えさせられる言動も多いのだが、エステルは才能の塊でもあった。想定外なところで活躍をしていたことが後々知れ渡り、両親が大慌てでエステルを取り押さえたことも少なくはない。

「えへへ。ドレスは作れないのでデザインだけ書いてお願いしたんです。あっ! 今回はお母さまに許可をとりましたよ!」

 エステルの言葉を聞き、アデラインはわかっていると言わんばかりに頷いた。

 ……デザイナーを呼んでほしかっただけでしょうね。

 専属のデザイナーをエステルが侯爵家に招くことはできない。

 ただでさえ、好き勝手に動き回るのだ。なにかと制限をつけておかなければ、なにをされるのか、わかったものではない。

「本当はお姉さまの誕生日にプレゼントをしようと思っていたんですけど。お姉さま、誕生日はお仕事でしょう? だから、今日、渡しますね」

「ありがとう。エステル。とても素敵な贈り物だわ」

「喜んでくれてよかったです。……あたし、やることを思い出したので、もう行きますね!」

 エステルはなにか思い出したのだろうか。

 大慌てで衣装室を飛び出していった。

 ……ろくなことではないわね。

 アデラインはエステルの奇行を知っている。

 だからこそ、予定を思い出したというのは嘘であり、とんでもない企みを思いついたのだろうと察した。

「マリアに監視をさせなさい。なにをするか、わからないわ」

 アデラインの指示を受け、メイドの一人が動いた。

 エステルの専属メイドの一人であるマリアに伝えに行ったのだろう。
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