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第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
04-12.
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「明日と五日後が休暇のはずです」
アデラインは騎士の中でも休暇が多い方である。
正規の騎士ではあるものの、エインズワース侯爵家の令嬢として出席しなければならないお茶会や舞踏会もある為、毎週三日は休暇を与えられている。
そのことに文句があがらないのは、アデラインが強いからだ。
討伐任務などの遠出が必要となる任務では、アデラインの参加は必須であると仲間たちから思われているほどの実力者である。そんな彼女を相手に休暇が多すぎると文句を言い、決闘を申し込もうとする者は、今はいない。
そもそも、アデラインの休暇は父親に決められたものであり、彼女にはどうすることもできないのだが、その事情を公するわけにはいかなかった。
「明日は予定が入っているか?」
「いいえ」
「そうか。では、明日だな」
メルヴィンの言葉を聞き、アデラインはすぐに理解ができなかった。
……私の休暇がなにか問題でもあったのかしら。
明日は予定が入っていない為、急に仕事の予定を入れられても対応はできる。どうしても都合が悪くなった同僚と休暇の日付を交換することも珍しくはない。
「運がよく、明日の休暇が重なっている。たまには婚約者として会うのも、良いだろうと思ったのだが。……どうだろうか?」
メルヴィンは勇気を出して誘ったのだろう。
それを聞き、アデラインの動きは固まった。
……婚約者として?
それは男装のことを秘密にしてもらう代わりに聞くことになったメルヴィンの要望というのに、関係しているのだろうか。
……あれほどに避けていっしゃったのに。
都合が良いのには限度というものがある。
散々、お茶会や舞踏会の誘いを送っても仕事を理由に断られてきた。
その日、メルヴィンの仕事の予定が入っていないことを知っていたアデラインは、メイドたちが露骨なまでに気を遣うほどに傷ついていた日々を思い出す。
「……それほどまでに、アディ・エインズワースがお気に召しておりましたのね」
アデラインはメルヴィンを見上げる。
身長だけは誤魔化せられなかった。
「そのお誘い、受けさせていただきます」
アデラインは断らなかった。
散々無下にされてきた日々を考えれば断ってしまいたい衝動にかられたものの、休日に恋い慕う人と会えるという楽しみには抗えなかった。
アデラインは騎士の中でも休暇が多い方である。
正規の騎士ではあるものの、エインズワース侯爵家の令嬢として出席しなければならないお茶会や舞踏会もある為、毎週三日は休暇を与えられている。
そのことに文句があがらないのは、アデラインが強いからだ。
討伐任務などの遠出が必要となる任務では、アデラインの参加は必須であると仲間たちから思われているほどの実力者である。そんな彼女を相手に休暇が多すぎると文句を言い、決闘を申し込もうとする者は、今はいない。
そもそも、アデラインの休暇は父親に決められたものであり、彼女にはどうすることもできないのだが、その事情を公するわけにはいかなかった。
「明日は予定が入っているか?」
「いいえ」
「そうか。では、明日だな」
メルヴィンの言葉を聞き、アデラインはすぐに理解ができなかった。
……私の休暇がなにか問題でもあったのかしら。
明日は予定が入っていない為、急に仕事の予定を入れられても対応はできる。どうしても都合が悪くなった同僚と休暇の日付を交換することも珍しくはない。
「運がよく、明日の休暇が重なっている。たまには婚約者として会うのも、良いだろうと思ったのだが。……どうだろうか?」
メルヴィンは勇気を出して誘ったのだろう。
それを聞き、アデラインの動きは固まった。
……婚約者として?
それは男装のことを秘密にしてもらう代わりに聞くことになったメルヴィンの要望というのに、関係しているのだろうか。
……あれほどに避けていっしゃったのに。
都合が良いのには限度というものがある。
散々、お茶会や舞踏会の誘いを送っても仕事を理由に断られてきた。
その日、メルヴィンの仕事の予定が入っていないことを知っていたアデラインは、メイドたちが露骨なまでに気を遣うほどに傷ついていた日々を思い出す。
「……それほどまでに、アディ・エインズワースがお気に召しておりましたのね」
アデラインはメルヴィンを見上げる。
身長だけは誤魔化せられなかった。
「そのお誘い、受けさせていただきます」
アデラインは断らなかった。
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