5 / 121
第一話 転生悪役令嬢は男装の騎士となる
01-5.
しおりを挟む
「かまいませんわよ」
アデラインは気にもしなかった。
「紙切れに別れの言葉を書いただけですもの。私の最期の面会者となった貴方が受け取っても、なにも、おかしいことはありませんわ」
アデラインの言葉を聞き、メルヴィンは胸ポケットに紙をしまう。
落としてしまうことのないように念入りに確認をしていた。
「聖女には言付けをしようか?」
メルヴィンの提案は、本来、アデラインの手紙を受け取るべきだった少女に対する罪悪感によるものだった。手紙を横取りした自覚はあった。
「そうですわね。せっかくですもの、お願いいたしますわ」
「任せてくれ。必ず、伝えよう」
メルヴィンは口角を上げた。
……嘘みたいですわね。
幼い頃の癖が残っている。
それをアデラインが見抜いていることにメルヴィンは気づいていない。
……私の言葉を独り占めなさるつもりかしら。
それほどまでに強い感情を向けられる心当たりはない。
しかし、それを指摘する気もなかった。
「もしも、来世があるのならば」
アデラインは言葉を紡ぐ。
「私の愛を貴方にさしあげますわ」
それは義妹に向けた言葉ではない。
メルヴィンが言付けを伝えるという約束を守らないとわかっているからこそ、アデラインはメルヴィンへの愛を口にした。
* * *
凍えるほどに寒い雪の日だった。
布切れを繋ぎ合わせただけの簡易的な服を着せられ、靴を履くことも許されなかったアデラインは処刑台に向かって歩かせられる。
多くの貴族や市民が見物をする為に集まっている。
その中にはアデラインを罵倒する声をあげる者や、小石を投げつける者もいる。どこからか聞こえた聖女を害した悪女には死がお似合いだと叫ぶ声に同調する市民たちは、アデラインがなにをしてきたのか、なにも知らない。
……愚かな人たち。
アデラインは罵声に挫けない。
心を傾ける必要さえも感じなかった。
処刑人に急かされるように歩き、準備をされていた処刑台の前に立つ。
アデラインは気にもしなかった。
「紙切れに別れの言葉を書いただけですもの。私の最期の面会者となった貴方が受け取っても、なにも、おかしいことはありませんわ」
アデラインの言葉を聞き、メルヴィンは胸ポケットに紙をしまう。
落としてしまうことのないように念入りに確認をしていた。
「聖女には言付けをしようか?」
メルヴィンの提案は、本来、アデラインの手紙を受け取るべきだった少女に対する罪悪感によるものだった。手紙を横取りした自覚はあった。
「そうですわね。せっかくですもの、お願いいたしますわ」
「任せてくれ。必ず、伝えよう」
メルヴィンは口角を上げた。
……嘘みたいですわね。
幼い頃の癖が残っている。
それをアデラインが見抜いていることにメルヴィンは気づいていない。
……私の言葉を独り占めなさるつもりかしら。
それほどまでに強い感情を向けられる心当たりはない。
しかし、それを指摘する気もなかった。
「もしも、来世があるのならば」
アデラインは言葉を紡ぐ。
「私の愛を貴方にさしあげますわ」
それは義妹に向けた言葉ではない。
メルヴィンが言付けを伝えるという約束を守らないとわかっているからこそ、アデラインはメルヴィンへの愛を口にした。
* * *
凍えるほどに寒い雪の日だった。
布切れを繋ぎ合わせただけの簡易的な服を着せられ、靴を履くことも許されなかったアデラインは処刑台に向かって歩かせられる。
多くの貴族や市民が見物をする為に集まっている。
その中にはアデラインを罵倒する声をあげる者や、小石を投げつける者もいる。どこからか聞こえた聖女を害した悪女には死がお似合いだと叫ぶ声に同調する市民たちは、アデラインがなにをしてきたのか、なにも知らない。
……愚かな人たち。
アデラインは罵声に挫けない。
心を傾ける必要さえも感じなかった。
処刑人に急かされるように歩き、準備をされていた処刑台の前に立つ。
4
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

悪役令嬢に生まれ変わったので、転生ヒロインと話し合いをしてみた
七地潮
ファンタジー
転生悪役令嬢が、転生ヒロインに滔滔と語って聞かせるお話し。
作者独自の世界観のゆるふわ設定です。
ちょっとでも悪役令嬢に共感してもらえると嬉しいな、って感じの3話完結の話です。
小説家になろうでもアップしています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる