悪役は初恋に溺れ、Domに支配される

第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる

０３－８．

「好みだろう？」

　アレンの言葉に対し、ディーンは内心戸惑いつつも頷いた。

　……よく知ってるな。

　なにもかも調べ尽くさないと気が済まない性格なのだろう。

「貸して。付けてやるよ」

　アレンの言葉に大人しく従ってしまう。

　首輪をアレンに渡し、目を閉じる。

　本能に従うかのように、首筋をアレンに見せるかのように俯いたのは、無意識だった。

「【良い子Good boy】」

　前触れのなかったコマンドにより、ディーンの体が震える。

　……やばい。

　先ほどから感じていた物足りなさが満たされていく。

　……もっと、ほしい。

　腹の奥の疼きが酷くなる。

　もっと褒めてほしいと、満たしてほしいと貪欲な感情に支配され、ディーンはなにも言えなかった。

「んっ」

　アレンの指がディーンの首に触れる。

　首輪を付けようとしているのだろうか。

　アレンは、わざとらしく、指でアレンの首に触れていた。

「くすぐったいのか？」

「少しだけな」

「そうか。首輪を付けるまでの我慢だ。できるな？」

　アレンの手で顔を上に向けさせられる。

　それに気づき、ディーンは目を開けた。

「我慢できるから。早く、つけろよ」

　他人に触れられるのを好まないはずだった。

　ディーンの中の常識が塗り替えられていくのを感じる。

　家族とは、それなりの関係を築いてきたものの、ダイナミクス性を他人に知られることを恐れ、他人とは適度な距離を保つようにしなければいけなかった。

　なにもかもアレンの色に塗り替えられていくのを感じ、胸が高鳴る。

「似合っている」

　アレンはディーンの首輪をつけた。

　首輪を指で撫ぜる。その何気ない仕草にさえ、ディーンは息を飲んだ。