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第一話 脅迫された悪役令息は初恋に溺れる
02-18.
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「【言え】。なにが怖いんだ」
アレンの言葉を聞き、ディーンの口が開く。
「父上が」
上手く言葉にならない。
「きっと、許さないから」
結婚してほしいと告げられた時も、父親の許可が得ることができれば結婚すると答えていたと、ディーンは思い出しながら口にした。
「結婚は、許してくれると、思うけど」
大公家と関りを手に入れる為ならば、父親はディーンの結婚を許すだろう。
子どもたちの中では、もっとも愛情を向けられているとはいえ、ディーンは父親にとって政略結婚の駒の一つでしかない。
「でも、俺は」
声が震えてしまう。
「Domじゃないと、いけないって」
侯爵家で生きていく為には必要なことだった。
父親と兄弟はDomだ。
しかし、アレンのように強いDomではなく、限りなくNormalに近い。
それでも、ディーンがSubとして生きるのには支障が出てしまう。
父親はディーンの身体に異変が出ることを恐れていた。
だからこそ、Domで居続ければ、侯爵家で生きることに支障はないと考えていたのだろう。
ディーンも父親の考えは聞かされてきた。
母親を亡くし、父親の心は壊れたままだ。壊れた心のまま、父親はこれ以上、大切な家族を手放さないようにと必死に足掻いていた。
正解がわからないまま、足掻き続けた結果、ディーンにDomとして生きることを強制させてしまっていたのだろう。
「言いつけを、破って、しまったから」
しかし、それはディーンの意思を無視した行為であると、侯爵家の誰もが考えもしないことだったのだろう。
「どうしよう。アレン。父上に怒られてしまう」
ディーンの頬を涙が伝う。
「大丈夫だ」
アレンはディーンの涙を指で拭う。
「俺が説得をする。侯爵もわかってくれるはずだ」
アレンは侯爵家の事情を知っているのだろう。
公にはされていない事情もすべて調べ上げていることだろう。
「……アレン、は」
縋りつくようにアレンの服を掴む。
「俺を、嫌わない?」
「嫌わない。愛し続けると誓おう」
ディーンの言葉に対し、アレンは迷うことなく答えた。
……アレンが、嫌わないなら、いいか。
思考が上手くまとまらない。
いつもならば、弱音を吐くことはしない。
家族が望むようにDomを演じ、他人に隙を見せない。
……もう、いいか。
急激な眠気がディーンを襲う。
それに逆らうこともせず、アレンに身体を預けるような形で目を閉じた。
「眠くなったのか?」
アレンの問いかけに対し、ディーンは静かに頷いた。
DomからSubへ切り替えたことにより、身体に負荷がかかったのだろう。
アレンの言葉を聞き、ディーンの口が開く。
「父上が」
上手く言葉にならない。
「きっと、許さないから」
結婚してほしいと告げられた時も、父親の許可が得ることができれば結婚すると答えていたと、ディーンは思い出しながら口にした。
「結婚は、許してくれると、思うけど」
大公家と関りを手に入れる為ならば、父親はディーンの結婚を許すだろう。
子どもたちの中では、もっとも愛情を向けられているとはいえ、ディーンは父親にとって政略結婚の駒の一つでしかない。
「でも、俺は」
声が震えてしまう。
「Domじゃないと、いけないって」
侯爵家で生きていく為には必要なことだった。
父親と兄弟はDomだ。
しかし、アレンのように強いDomではなく、限りなくNormalに近い。
それでも、ディーンがSubとして生きるのには支障が出てしまう。
父親はディーンの身体に異変が出ることを恐れていた。
だからこそ、Domで居続ければ、侯爵家で生きることに支障はないと考えていたのだろう。
ディーンも父親の考えは聞かされてきた。
母親を亡くし、父親の心は壊れたままだ。壊れた心のまま、父親はこれ以上、大切な家族を手放さないようにと必死に足掻いていた。
正解がわからないまま、足掻き続けた結果、ディーンにDomとして生きることを強制させてしまっていたのだろう。
「言いつけを、破って、しまったから」
しかし、それはディーンの意思を無視した行為であると、侯爵家の誰もが考えもしないことだったのだろう。
「どうしよう。アレン。父上に怒られてしまう」
ディーンの頬を涙が伝う。
「大丈夫だ」
アレンはディーンの涙を指で拭う。
「俺が説得をする。侯爵もわかってくれるはずだ」
アレンは侯爵家の事情を知っているのだろう。
公にはされていない事情もすべて調べ上げていることだろう。
「……アレン、は」
縋りつくようにアレンの服を掴む。
「俺を、嫌わない?」
「嫌わない。愛し続けると誓おう」
ディーンの言葉に対し、アレンは迷うことなく答えた。
……アレンが、嫌わないなら、いいか。
思考が上手くまとまらない。
いつもならば、弱音を吐くことはしない。
家族が望むようにDomを演じ、他人に隙を見せない。
……もう、いいか。
急激な眠気がディーンを襲う。
それに逆らうこともせず、アレンに身体を預けるような形で目を閉じた。
「眠くなったのか?」
アレンの問いかけに対し、ディーンは静かに頷いた。
DomからSubへ切り替えたことにより、身体に負荷がかかったのだろう。
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