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プラネタリウムは密室(仮)ですか?
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「うむ、確かに私なら人知れずプラネタリウムに侵入でき、こっそり退出もできる。だがな後藤君。理論的に可能でも証拠がなければそれはただの想像だよ」
推理小説の真犯人みたいな台詞を。証拠がなければ認めないってわけですかい。
そう、今話した推理は尼寺の証言と状況証拠から組み立てたものに過ぎない。主任の口から自白させなければこの事件は解決しない。それを促す物的証拠は――。
「通常アテンダントは明るいうち、プラネタリウムの日の入り前にドーム内を巡回します。主任はこの巡回が終わってから中に侵入したつもりでした。しかし件の回のアテンダントは新人の尼寺です。要領をつかめていない尼寺は暗くなってから遅れて巡回を行いました。侵入している現場に鉢合いこそしませんでしたが、尼寺は寝ている主任をみつけます」
夜目のきいた視線を尼寺に向ける。
「残念ながら主任だとは気付きませんでした。暗くて黒かったので。寝言が気になったので注意しようと思ったのですが。そこで観覧券があることに気付いて回収いたしました」
「観覧券?」
主任が聞き返した。初めてその顔に動揺が見られた。
「そうプラネタリウム観覧券。首かけストラップ付きのあれですよ。主任も十分ご存じでしょう。ちなみに午前の回は青色のストラップでした。あれ?おかしいですね。チケットカウンターによると販売されたプラネタリウム観覧券は27枚。それらは全てプラネタリウムの入場時にお客さんから回収されました。では尼寺が寝ている主任から回収したという観覧券とは?」
「私が回収したのはちゃんとプラネタリウム観覧券でしたよ。青色のストラップ付き観覧券です」
「明るいところで確認してみたか?ストラップが青色なのか。その先に付いていたのが観覧券だったのか」
詰問、というか確認を重ねる。すまない尼寺。責めているのはお前ではなく、俺から目をそらし始めた白髭カールおやじの方だ。
「いえそれは……。回収後は入口の内扉内の籠に入れましたのでずっと暗いままでした」
「もしかしたらストラップは黒色だったかもしれない。ストラップの先には整理番号が書いてある観覧券ではなく名前が書いてあったかもしれない。それは当館職員の名札だったかもしれない」
家名と尼寺が息を飲むのを感じる。
薄闇の中、主任に向き直る。観念しやがれ。
「ところで主任。お探しの名札はチケットカウンターに届いていましたよ。27枚の観覧券と共に」
推理小説の真犯人みたいな台詞を。証拠がなければ認めないってわけですかい。
そう、今話した推理は尼寺の証言と状況証拠から組み立てたものに過ぎない。主任の口から自白させなければこの事件は解決しない。それを促す物的証拠は――。
「通常アテンダントは明るいうち、プラネタリウムの日の入り前にドーム内を巡回します。主任はこの巡回が終わってから中に侵入したつもりでした。しかし件の回のアテンダントは新人の尼寺です。要領をつかめていない尼寺は暗くなってから遅れて巡回を行いました。侵入している現場に鉢合いこそしませんでしたが、尼寺は寝ている主任をみつけます」
夜目のきいた視線を尼寺に向ける。
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「観覧券?」
主任が聞き返した。初めてその顔に動揺が見られた。
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詰問、というか確認を重ねる。すまない尼寺。責めているのはお前ではなく、俺から目をそらし始めた白髭カールおやじの方だ。
「いえそれは……。回収後は入口の内扉内の籠に入れましたのでずっと暗いままでした」
「もしかしたらストラップは黒色だったかもしれない。ストラップの先には整理番号が書いてある観覧券ではなく名前が書いてあったかもしれない。それは当館職員の名札だったかもしれない」
家名と尼寺が息を飲むのを感じる。
薄闇の中、主任に向き直る。観念しやがれ。
「ところで主任。お探しの名札はチケットカウンターに届いていましたよ。27枚の観覧券と共に」
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