星空(仮)の下で謎解きを

木材あかり

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プラネタリウムは密室(仮)ですか?

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「さて、まずは貴女方の勘違いを正しておこうか」

きょとんとした風な二人。

「勘違い? なんです?」

家名が素直に問う。尼寺も言葉には出さないが同じことを思っているだろう。

「午前の回のプラネタリウム入場者は27人だ」

「え、28人では……?」

さすがの尼寺も驚いているようだ。まあ確かに今まで『入場者は28人』という前提で話を進めていたからな。驚く尼寺に応える。

「確実。プラネタリウムの投影後には必ず日誌を記入するんだ。入場者何名、途中入退場者何名などと。さっきの回はカール主任が入場者の欄を記入してくれていた。27人だ。もちろん先ほど下のチケットカウンターに内線でチケット購入者の数を確認しているので誤魔化しはきかない」

「でもニージちゃんは入場時に28人数えたんだよね。そう言ってたもんね」

尼寺に問いかける家名。

「いいやよく思い出せ。私が『入場者は28人で確実なのか?』と聞いたとき尼寺は少し考えた後『総観覧者28人でした』と言った。なぜ総観覧者・・・・と言い直したんだ?」

「それは――」

少し詰問する感じになってしまって尼寺は委縮する。

「尼寺と話していて、基本ハキハキと受け答えするのに何度か言い淀むときがあった」

例えば投映後、途中入退場者がいないか聞いたとき。例えば気になる客がいなかったか聞いたとき。

「私の推理を話してやろう。午前の回、入館者は27人だが総観覧者は28人だった。つまり投映中に1人途中入場したということ。だからこれは消失事件ではなく侵入事件というわけだ」

息を飲み、驚く二人。

「では犯人は何をしにドーム内へと侵入したのか。それは睡眠。解説中に巡回していた尼寺が気になっていた熟睡客こそがこの犯人です。まあ、眠って寝言を言っていただけではただの客です。尼寺が気になった点、それはその眠っていた客がストラップ付き観覧券・・・・・・・・・・を持っていたから。回収し忘れたのがバレたらまずいと思い言い淀んだのだろう」

私がそう話すと尼寺は頭を下げ謝罪した。

「申し訳ありませんでした。入口でお客様全員から回収した記憶はあったのですが、初めての担当のプラネタリウムでしたので、もしかしたら回収し忘れてしまったのではと思ってしまいました」

「だから完全数だと気付いたのだろう。貴女は完全数の説明をするとき『おひとり様が1組と4組』と言った。おひとり様が5組、ではなかったのは1組1名に後から気付いたから、だろ」

「その通りです」
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