星空(仮)の下で謎解きを

木材あかり

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プラネタリウムは密室(仮)ですか?

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『今日もたくさんの疑問を解決したなあ。でもやっぱり、謎解きの鍵は星空の下にあったね!』

おっと、つい考え事に没頭してしまった。もうそろそろ投映終了時間だ。

アテンダントを探し出口に目を向ける。いない、ということは出口扉を開ける準備をしているころか。尼寺今回は寝落ちしなかったようだな。

もしくは浅く寝るコツを家名に聞いたかな。

――朝の開館時間までに星空探偵はもとの場所に戻らなければいけません――

『それではみなさんまた今夜。星空の下で謎解きを!』

――星空探偵が抱える質問箱は、この科学博物館の隅にひっそりと設置されています。皆さんも何か疑問があったら質問箱に手紙を出してみてください。夜のあいだに星空探偵が答えを見つけてくれますよ――


エンドロールが流れドーム内が明るくなる。

「以上をもちまして、今回の投映を終了いたします。お忘れ物ございませんよう、今一度お座席をお確かめください。お出口は左手側の一ヶ所です。本日はご来場まことにありがとうございました」

アナウンスの終わりと同時に出口扉が開く。三々五々退場していく客を見送りながら操作卓を操作し初期状態へと戻していく。次の投映担当である主任にまっさらな状態で引き渡すためだ。

そして内線を使いある場所へ連絡をする。俺の予想通りなら……。


そうこうしているうちにアテンダントが二人帰ってきた。

「はい、やはりそうでしたか。ありがとうございます。失礼します……。よし、では報告を聞こうか」

内線を切り二人に向き直る。

「途中入退場者0です。今回は消失者も0でした」

操作卓を挟んで向こう側、家名が茶化して言う。

「はい、今回の入場者は37人。退場された方も37人でした。素数です」

元数学科の尼寺もそれに応える。

「で、で!午前の回の消失事件は解けたんです?」

「まさかこの投映の僅かな時間で真相を暴くのは難しいでしょう。……もし解けているのなら教えていただきたいですものですが」

動と静の表情に同時に迫られる。どちらも身をのり出すほど、好奇心は隠しきれないらしい。

「恐らくこれという推理はある。せっかくだから次の投映が始まるまでの間に聞かせてやろう。星空の下で」

時間的にもちょうどよさそうだ。

は全て繋がった。さあ紡ごうこの事件星座。説いて語ろうその真実神話

プラネタリウムの中の時間を進める。

太陽が西に沈み、空が暗くなっていく。

一番星が見え始めるころ、私は口を開く。

古今東西、探偵が謎解きをするときは決まってこの言葉から入らしい。

 マイクを通した声はドーム内に小さく響く。


「さて――」
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