星空(仮)の下で謎解きを

木材あかり

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プラネタリウムは密室(仮)ですか?

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「本日は県立宇宙科学博物館へお越しくださいまして、ありがとうございます。今回、星空の解説を担当いたします後藤と申します。そして星空投影を担当してくれるのは、今ドームの中央部分からゴゴゴという音をあげ上ってきている機械です。プラネタリウムの心臓部、投影機です。いつどこの星空でも再現することができるのがプラネタリウムという空間なのです」

序盤の解説はもう言い馴れたもの。いつも通りの解説だが今日は少し変えていこう。デジタル投映機の設定を変え曇り空の映像をドームに映す。こういう演出はデジタル投映機の得意分野だ。

「6月のある日、その日は朝から雨が降りそうな天気でした。そんな日はなんだか気分が沈みがち。そんな気分を晴らそうと、皆さまはこのプラネタリウムを訪れたのではないでしょうか。そう、ここでは場所も時間も、天気でさえも自由自在。この陰鬱な天気も……。ほら!」

ドーム内の天気が曇天から快晴へと変化すると同時に景色も映し出された。

「このドームの中は、雨の心配がない快晴の空へと変わりました。今周りに出てきた景色は、この館の周りの景色です。皆さんの正面が南です。そして入ってきた右手入り口側の方角が西。反対側、左手出口側の方角が東。そして頭をそらして後ろの方角が北になります。星空をご案内する上で方角はとても大切ですので、よく覚えていてくださいね」

次は太陽を映しその説明をしていく。通常その明るい内にアテンダントはドーム内の巡回をするのだが。巡回に来ない。

そういえば午前の回も来るのが遅かったな。

すっかり日も暮れ完全に夜になったところで後ろを通る気配を感じる。遅れはしたがまあしっかり巡回しているのならよしとするか。

「この辺で時間を止めましょう。皆さんの目の前に広がっているのは春の星座たち。そして東の空からは夏の星座たちが顔を出してきました。ところでこの夜空、皆さんのお家の周りと比べて見えている星の数は多いですか?少ないですか?最近は街明かりの影響で星が見えにくくなっています。夜を明るくする光は我々を便利にする反面、人々を星から遠ざけました。地上に灯りが一つともると、夜空の星が一つまたひとつと見えなくなっていくのです。ですがここは星空を見る場所、プラネタリウムです。地上の灯りを全て消し、満天の星々を皆さんにご紹介したいと思います」

満天の星々への切り替え。ここがプラネタリウムの一番の醍醐味。

街灯りに慣れすぎた我々にとって満天の星々は非日常だ。

星空の世界は神々の世界。

その世界へと至る一瞬の魔法。

「今から3つ数えます。その間皆さんには目を閉じていてもらいたいと思います。目を開けた時、そこには眩い星空が広がっているはずです。それでは目を閉じてください。いーち、にーい、さん。はい、目を開けてください」
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