星空(仮)の下で謎解きを

木材あかり

文字の大きさ
上 下
17 / 28
プラネタリウムは密室(仮)ですか?

☆☆☆☆☆☆☆

しおりを挟む
両手に花でプラネタリウムへと入ると、すかさず尼寺は家名を連れだって内側から三ヵ所の出入り口を確認する。右手側の入口、操作卓後ろの裏口、左手側の出口。その他抜け穴がないか念入りに調べているようだ。

俺は投映の準備を始める。この館のプラネタリウムは前半に今夜の星空案内、後半に全天周映像番組というスタイルである。投影機も二種類あり前半はプラネタリウムの本体である光学式投影機を使用し、後半は全天周対応のデジタル式投映機を用いる。

準備でまず最初にするのはデジタル投映機への番組のロード。番組投映は全てコンピューターが行ってくれるので一度ロードしておけば開始はボタン一つですることができる。あとは星空解説で使用するプログラムも確認しておく。

そして光学式投影機の、今夜の星空の確認を行う。しっかり星像が映っているか、日付時間は間違っていないか等を確認する。そして星空を見ながら解説の内容を考える。午前中に一度解説はしたので基本的な内容は同じでいいだろう。ただ前回の番組『惑星が奏でる交響曲』に比べ『星空探偵の大冒険』は投映時間が短いので解説を長くする必要がある。あとは観覧する客層を見てからアレンジすればいい。


ヘッドマイクを装着ししばし熟考する。

頭がよく回っているのを感じる。

星空を自由に操作できる全能感も。

この星空の下では全てがの思うがまま。なんて。


ここまで準備したところで次はアテンダントと発声練習。アテンダントは投映前に注意事項と説明する仕事がある。新人アテンダントなので少し長めに時間を取ろう。滑舌、喉の調子を整える。二人とも声がよく出ている。流石の家名も仕事中は本性を引っ込めているようだ。

「先輩方、どちらも仕事中は真面目なのですね」

と尼寺談。ってどういう意味だコラ。

「ああ、そうだ。一応前回の再現をしてみよう。観覧券の回収とMCを尼寺、君に頼みたい。アーユーオーケー?」

「私は大丈夫です。お任せください。でも家名先輩のお仕事が――」

ちらりと家名を見る。

「任せたぜ後輩!俺っちはサポートに回るとするぜ」

何キャラだよ。だが緩んだのは束の間。仕事モードに切り替わる。

「じゃあ尼寺はできるだけ前回の行動をなぞっていってくれ。家名はお目付け役だ」



現場検証――もとい投映の準備はオッケー。投映開始10分前。俺は操作卓の内側から尼寺と家名に目配せし入口の前に待機させる。

「さあ開けよう夜の帷を。招き入れよう今宵の客を」

いつもとキャラ違くないですか、と家名の声を無視して私は扉を開けた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...