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プラネタリウムは密室(仮)ですか?
☆☆☆
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凍っていたのも幾ばくか、解凍された家名に詰め寄られる。
「なんで! どうしてニージちゃん?! 」
「どうどう、落ち着け。この程度の謎、星空(仮)の下で解くまでもない」
軽く謎解きしてやるかね。
「さて、まずは質問用紙の名前欄を見てみよう。『Ⅱ』ローマ数字の2だ。流石にこんな名前の奴はいないだろう」
「や、まあ普通に考えて暗号ですね」
「話は変わるが今日、アテンダントの誕生会があったんだってな」
不意の閑話休題に少し怪訝な顔の家名。
「え、はい。今月はニージちゃんだけでした」
「で、大学卒業したての23歳だと」
「ちゃんと話聞いていたんですね。それがなにか?」
少し驚いた風に家名は答える。
「大学は基本4年制だから、今年卒業し今23歳ということはもう誕生日を迎えたということになる。すると6月生まれの尼寺はふたご座となる。ふたご座のシンボルマークはこう。ローマ数字のⅡに酷似しているんだ」
♊
メモ用紙にふたご座のシンボルマークを書いてやる。
「ちょっと待ってください!仮に名前欄の『Ⅱ』がふたご座を表しているとして、ふたご座生まれ人なんていくらでもいますよ!仮にアテンダントの中だとしても、どうしてニージちゃんなんですか?」
「その疑問に答えてやろう。アテンダント内にふたご座生まれは尼寺だけだ」
「どうしてそう言い切れるんです?全員の誕生星座を知ってるんですか」
「俺が知っているのはお前が4月の誕生会には参加できず、今月6月の誕生会が初参加ということ。言及していないということは5月は誕生会が行われなかった。つまり5月生まれのアテンダントはいないということ。ふたご座生まれの誕生日は5月21日から6月21日までだから5月生まれがいない以上、6月中旬には誕生日を迎えている尼寺エミがアテンダント唯一のふたご座生まれとなる。了解?」
「でもふたご座生まれだからってサインにシンボルマークを使います?」
「いや尼寺エミは特別だ」
「……さっきから思ってたんですけど、なんでニージちゃんのフルネーム知っているんですか。名札には苗字しか書いてないのに」
なにやら面白くなさそうな感じで呟く。その疑問はもっともである。俺たち職員の名札は、黒地に白色の館のロゴ入りネックストラップで首から下げるタイプのものである。対してアテンダントのそれは、胸元にピンで留める小さなものである。苗字を書くのがせいぜいのスペースしかない。
「尼寺から聞いた、のではなく、推理していくうちに自ずと出てきたんだよ。さっきお前尼寺のこと話してたとき『学生時代のあだ名が可愛くて』って言ってたよな」
「……ちゃんと話聞いてたんじゃん。ええ、確かあだ名は――」
「『ジェミニ』だろ」
「そうです! けど、わたしそこまで話しましたっけ?」
「推理したって言ったろ。自分を表すのにふたご座のシンボルマークを用いる。ふたご座生まれというのもあるが、もっと自分に近い存在なのかもしれない、と。例えば名前から連想されるとか」
「にいじえみ……。あ! そういうこと!」
「なんで! どうしてニージちゃん?! 」
「どうどう、落ち着け。この程度の謎、星空(仮)の下で解くまでもない」
軽く謎解きしてやるかね。
「さて、まずは質問用紙の名前欄を見てみよう。『Ⅱ』ローマ数字の2だ。流石にこんな名前の奴はいないだろう」
「や、まあ普通に考えて暗号ですね」
「話は変わるが今日、アテンダントの誕生会があったんだってな」
不意の閑話休題に少し怪訝な顔の家名。
「え、はい。今月はニージちゃんだけでした」
「で、大学卒業したての23歳だと」
「ちゃんと話聞いていたんですね。それがなにか?」
少し驚いた風に家名は答える。
「大学は基本4年制だから、今年卒業し今23歳ということはもう誕生日を迎えたということになる。すると6月生まれの尼寺はふたご座となる。ふたご座のシンボルマークはこう。ローマ数字のⅡに酷似しているんだ」
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メモ用紙にふたご座のシンボルマークを書いてやる。
「ちょっと待ってください!仮に名前欄の『Ⅱ』がふたご座を表しているとして、ふたご座生まれ人なんていくらでもいますよ!仮にアテンダントの中だとしても、どうしてニージちゃんなんですか?」
「その疑問に答えてやろう。アテンダント内にふたご座生まれは尼寺だけだ」
「どうしてそう言い切れるんです?全員の誕生星座を知ってるんですか」
「俺が知っているのはお前が4月の誕生会には参加できず、今月6月の誕生会が初参加ということ。言及していないということは5月は誕生会が行われなかった。つまり5月生まれのアテンダントはいないということ。ふたご座生まれの誕生日は5月21日から6月21日までだから5月生まれがいない以上、6月中旬には誕生日を迎えている尼寺エミがアテンダント唯一のふたご座生まれとなる。了解?」
「でもふたご座生まれだからってサインにシンボルマークを使います?」
「いや尼寺エミは特別だ」
「……さっきから思ってたんですけど、なんでニージちゃんのフルネーム知っているんですか。名札には苗字しか書いてないのに」
なにやら面白くなさそうな感じで呟く。その疑問はもっともである。俺たち職員の名札は、黒地に白色の館のロゴ入りネックストラップで首から下げるタイプのものである。対してアテンダントのそれは、胸元にピンで留める小さなものである。苗字を書くのがせいぜいのスペースしかない。
「尼寺から聞いた、のではなく、推理していくうちに自ずと出てきたんだよ。さっきお前尼寺のこと話してたとき『学生時代のあだ名が可愛くて』って言ってたよな」
「……ちゃんと話聞いてたんじゃん。ええ、確かあだ名は――」
「『ジェミニ』だろ」
「そうです! けど、わたしそこまで話しましたっけ?」
「推理したって言ったろ。自分を表すのにふたご座のシンボルマークを用いる。ふたご座生まれというのもあるが、もっと自分に近い存在なのかもしれない、と。例えば名前から連想されるとか」
「にいじえみ……。あ! そういうこと!」
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