星空(仮)の下で謎解きを

木材あかり

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私の名前(仮)は何でしょう

ζ(ゼータ)

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「星はすべてを教えてくれる……か。っともうこんな時間か」

――朝の開館時間までに星空探偵はもとの場所に戻らなければいけません――

『それではみなさんまた今夜。星空の下で謎解きを!』

――星空探偵が抱える質問箱は、この科学博物館の隅にひっそりと設置されています。皆さんも何か疑問があったら質問箱に手紙を出してみてください。夜のあいだに星空探偵が答えを見つけてくれますよ――


END


番組が終わり徐々に明るくなっていくドーム内。出口側のドアが開く。一人の女性客が出ていったのに続き、他の観覧者も退場していく。

「『星空探偵の大冒険』お楽しみいただけましたでしょうか。以上をもちまして番組上映を終了させていただきます。お忘れ物ございませんよう今一度、お座席をお確かめください。本日はご来館誠にありがとうございました。またのご来館をスタッフ一同心よりお待ちしております」

定型文を口に出し退場客を見送りながら頭の中で反芻する。

本当にこの答えか?

とてつもなく嫌な予感がするぞ。



「どう後藤君?暗号解けた?私ずっとも気になってて。どんな名前だったのかなあ」

投映終了後、客がいなくなった場内に声が響く。ドームの出口を閉めた早乙女さんが駆け寄ってくる。そんな彼女に俺はそっけなく言い放つ。

「いや解けましたよ。意外と簡単に」

「えーほんと?!じゃあ質問者の名前わかったの?」

納得と意外さとが半々のような顔をしながらこちらを見つめる早乙女さん。

「もちろんですとも。順を追って説明しますのでその辺りに掛けてお待ちください」

何か言いたげな顔をしながらも大人しく座る早乙女さんを確認すると、私は投影謎解きの準備を始める。

南の空に太陽を映してからプラネタリウムの時間を進めていく。太陽が沈み西の空が赤く染まり、やがて真っ暗に。暗闇に目が慣れればそこは満天の星々の下である。

「謎解きは星座探しに似ています。バラバラに見えていた星たちも、結んでしまえばその星座にしか見えなくなる」

だから私は好きなんだ。

は全て繋がった。さあ紡ごうこの事件星座。説いて語ろうその真実神話

謎解きを始めようか。

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