scene69take1

面蛸とおる

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あれかしばらく経ち、ふと私は意識を取り戻したように目を覚まして。

あたりを見渡すと…。

そこには優雅に紅茶を楽しむランゼルト様が居て…。

(あれ…今日は私とした後にも居てくれるなんて…どういう風の吹きまわしでしょうか?)

とそう心の中で呟きながら、行為によって痛む身体を起き上がらせて。

「…今日の紅茶はどうですか?」と彼に尋ねると。

「ああっ…今日の紅茶は実に甘すぎるだ…」

「えっ…甘すぎる紅茶なんですかっ…?その…嘘ですよね、だってランゼルト様甘すぎるのお嫌いでしたよね??」

私はそう混乱したように言いながら、彼の元へ近づけば。

「ああ甘すぎるのは嫌いだ…でもアキツシマは大好きだろう?…だから今日は甘すぎる紅茶を飲んでいるのだ」

とそう言って私の口にカップを向けて渡してくるので。


「もう本当にランゼルト様ったら…まさか私のために紅茶を淹れてくださったのですか?」

とそう聞けば、

「そうだ」とランゼルト様は優しく答えて…。

「…なあアキツシマ?起きてばかりでいうのもアレなのだが…その…なんというか、お前が私と離れてる間に描いた絵を私に見せてくれないか?」

「…えっとその…scene69take1の事ですか?」

「ああそうだ、そのscene69take1は何処にあるのだ」

「ちょっとまってくださいっ…今布を外しますので…」

私はそう言いながら、ランゼルト様からいただいた紅茶をゴクゴクと飲みほして、
近くにあったテーブルの上にカップを置いてから。

キャンバスにかけた布を優しくゆっくりと外して…。

楽しみにしていたランゼルト様に、完成した絵を自慢するように見せれば…。


「成る程…お前の目にはこのように見えたのだな…そうかありがとうこんなに美しい絵を私は見たことがない」

とそうランゼルト様は聞いたことのないぐらいの嬉しい声で、私を褒めるので。

「もうそういう風に褒めないでくださいよ…嬉しすぎて、頑張った甲斐があります…」

とそう微笑んで言ってから続けて、

「ですが…その実はこの絵、残念ながらまだ未完成なんです…」

「なっこれが未完成だと、おい冗談はやめろ…ここまで描いてあるのに、まだ未完成なのか?」

「はいそうなんです…だって完成させてしまったら、この極夜の逢瀬はもう二度とないのですもの…だからこそこの絵は終わりがないように、未完成にしました」

私はそう強く言いながら、絵にまた布をかけてこう続ける。

「なので…本当に完成するのは早くても800年後でしょうか?」

「あはははっ…そうか、それなら未完成なのも仕方がないな…」

「はいすみません…。次こそは必ず貴方に、本当に完成したscene69をお見せしますので…どうかその日までこの私と一緒にいてくださいね」

「言われずとも、そうしよう…たとえ800年もの歳月が経とうとも、私はお前とこの地にまた来ることを約束しよう」

ランゼルト様は私の言葉にそう返して、
力強く私をぎゅっと抱きしめて口に甘い口づけをおくるので。

私はそれを受けいれながら、ぎゅっと抱きしめるランゼルト様の背に手をまわして。

幸福的で幸せな笑みを、ここには存在していないもう一人の『私』に見せつけるかのように。

ニコリと、向こうの私を哀れむかのように。

静かに、静かに微笑んだ。



 



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