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面蛸とおる

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第二章極夜の世界で温かな…

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─もぞもぞと、何かが動く音が耳に聞こえる…。


私はその些細な音を聞きながら、不思議な夢から浮上するかのように目を覚まし。

隣で私を抱き枕のようにして眠っているランゼルト様の顔を愛おしそうに見つめながら、

彼に聞こえるか分からない声で。


「…ランゼルト様がっ…テスカトル様になる夢を見ました…」と切なく呟いてから続けて。


「おはようございますランゼルト様、本日も良い極夜の世界です」

と彼を起こすように大きく言えば。


「嗚呼そうだな…とても良い極夜だ」と嬉しそうにランゼルト様はそう返してきたので。

「…はいそうですよ。だから…そろそろ起きてください」

「もうそのような時間なのか?」

「ええそうですよ…。そろそろ私もアキまくらからアキツシマに戻りたいので」

とむくれるように言えば。

「わかった、目覚めよう」と、

どこまでも優しい声でそう言いながら私を離して…。

ランゼルト様はベットから起き上がり、そしてゆっくりとカーペットの上に降りながら。

「アキツシマ少しここにいるといい…今日行く場所の為の準備をする」と、

私に命令したので。

私は暖かなベットの上で、

「分かりましたランゼルト様…ここでお待ちしております」

と彼の言葉にそう返してから、にっこりと微笑むと。

「…そういうお見送りは、

やめろっ…あと今日だけにしろっ…!!可愛いすぎて悶え狂いそうだ…」

とランゼルト様はそう照れたように言いながら、

この部屋とは違う部屋へ走り出してしまったので。

「ラーニャったら…ほんとツンデレなんだから」

と私はベットに敷かれた毛布にくるまりながらそう呟いて…。

ランゼルト様が戻ってくるまで、このベットから見える美しい街並みを。
芸術と芸能を管理するモノとして、じっと静かに時を忘れる勢いで唯々見つめ始め…。

「ほんと…勝色にあわせた不言色の光が、とても幻惑的でありながら暖かくもあって切ないですね」

とその光景を褒めるように言えば。

知らぬ間に戻って来ていたランゼルト様に。

「うん…? 勝色と、不言色とはどういう色をさすのだアキツシマ?」

とそう尋ねられてしまったので。

「えっとその…勝色は紺色に、いえダークブルーに近い色のことをさす言葉で…あと不言色はクチナシの実で染めたような色です」

と、彼に伝わるようにそう返しながら、ランゼルト様の方を振り向くと…。

なんとそこには、完全防寒をしたランゼルト様がいて。
私はそのモコモコとした姿に思わず驚き。

「ふえっ…モコモコっ…!?ランゼルト様がっ…!!」と叫ぶように言えば。

「モコモコな私は意外か?」と真面目そうな顔をしながら、真剣にそう私に聞いてくるので。

「ええ意外ですよ…だって私の中ではランゼルト様は寒さに強いってイメージがあったので」


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