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面蛸とおる

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第一章 極夜の冬祭り

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ピカピカと輝くランタンの光と極夜の空を彩る緑のオーロラがとても素敵な、まるでおとぎ話に出てくる風景のようであって、どこか懐古的な石造りの建物であふれた町並みをランゼルト様と一緒に歩く。

…そう二人だけで歩くのだ。

今日から続くこの極夜が終わるまで、
この場所に私たち以外の管理者はいないから…。

そう、だからこそ。普段では絶対にできない。

ランゼルト様と手を繋いで、わいわいと出店で賑わう素敵な街をひたすら歩くのだ。

(この幸福的で幸せな時を、永遠に忘れないように…)と、

そう私は心の中で思いながら、ぎゅっと強く目を閉じようとすれば。

隣でずっと真面目な顔をしていたランゼルト様が、

「どうしたアキツシマ?目が痛むのか」と心配した声で、私に問いかけてきたので。

私はすぐさま。

「いえ、なんでもありません」
「…そうかならいいのだが」
「すみません、ご心配をおかけしました」

私はそう謝りながら、私のことを心配しているランゼルト様に。

『なんでもありませんよ』と分かってもらうために、優しく微笑みながら。

出店で賑わう広場の中央を指差して、こう言葉をかけた。

「ランゼルト様、あそこにある木製の光輝くオブジェはなんでしょうか?」
「…ツリーのことか?」
「はい、そうです。その…私、今回初めて見たので…」

私はそう言いながらニコニコと笑って、
ランゼルト様の手を引っ張るかのように赤と白の丸いオブジェと、光り輝くライトが幻想的に飾られたツリーの元へ彼を引き寄せた。

「今日は随分と強引だな…健気さが足りないぞアキツシマ」

ランゼルト様はそう意地悪そうな笑みを浮かべながらも、どこか嬉しげで。

私はそんな彼に少し悪戯めいた事をしたくなってしまい…。

「俺だって健気じゃねぇ時も、あるんだよ!!」と強気に言えば。

「どこで…そんな言葉を覚えた?まあでも…。
そういう態度も唆るから、堪らなく好きだぞアキツシマ」と。

今にでも襲いかかりそうな獣のような瞳で、ランゼルト様は怪しくそう笑うので。


「…そう怒らないでくださいよランゼルト様っ…。ちょっとした冗談です」

「別に怒ってなどいないぞ。…ただもの凄くお前をナカしてやりたくはなっただけだ」

「ええっー!!なおさらダメですっ!!お外で淫らなことはっ…いけない事ですので」


私はそうあわあわしながら、
私の手をキツく握りしめるランゼルト様の手を振りほどいて。

彼から逃げるように、人が誰も居なそうな路地裏へと走り…。


そして心の中で、
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