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はじまり
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──世界が夜の色に染まっていく。
静かに静かに、誰にも気づかれないように…。
今日もあの人のペンギン達が。
この氷と雪に閉ざされた世界を夜の風景へと誘う。
…嗚呼そんな美しい光景に、私は…いえ、
芸術を管理するために創られたアキツシマは唯々その情景を見つめながら。
これから続く、極夜というなかなかあけない夜という世界を。
一つの芸術作品として昇華し、管理者としてこの世界に残すために…。
白紙のキャンパスを一つ取り出して。
はぁーと、一つだけ息をゆっくり吐き出してから。
雪のように白いキャンバスに、黒の鉛筆で…。
この宵闇の情景を描き進めようとしたら、後ろから。
「…よく見もしないで、私の世界を描くのはやめてくれないか」
と少しだけ怒ったように言い放つランゼルト様がいて。
私は思わず。
「ごめんなさい、ランゼルト様…その、えっと…この光景があまりにも美しかったので、
ついこうしてしまいました」と言いながら、
普段あまり着ない白のYシャツに合わせた緑のネクタイを、
大きく揺らす勢いで彼の元に近寄った。
「そう謝るなアキツシマ、お前がこれをみてそう思ったのは…まあ仕方がないことだか、
その私も少しだけ大人げなかった事は詫びよう」
「なにをおっしゃるのですか!!ランゼルト様、詫びなどいりません!」
「でも僕は謝りたいから、ごめんねアキっていうよ」
そう、ランゼルト様はデレた時にしかみせない表情と口調で優しく私に言うので。
「もうラーニャったら、その謝りかたずるいですよ」
「悪かったな。…だがそういう私の事が好きだろう?アキツシマは」
「ええ、そうですよ。大好きですよ…だからこそ少しお聞きしますが、
何故よく見もしないで描くなとおっしゃったのですか?」
私はそう言いながら、
金色にほのかに輝くプラチナブロンドの髪を後ろで一つに縛ったランゼルト様の髪を、
子供のように引っ張れば。
ランゼルト様は少し笑いながらこう言葉を返した。
「それはな、今日から冬祭りがあるからだ」
「冬祭り…ええっー!!そうだったんですかっ!!」
「ああそうだ、まさか知らなかったのか?」
ランゼルト様はそう不思議そうに言いながら、私の黒髪をあやすように撫ではじめたので。
私はそれを愛おしく思いながら、
この絢爛豪華な寝室にあるモノより美しくて、誰よりもカッコいいけど。
どこか畏怖的な恐ろしさがあるランゼルト様の、紫と赤の瞳をじっと見つめて。
こう言い返した。
「ええ、残念ながら。そのような事を私はきいておりませんでした」
「…そうか。なら仕方がないな」
ランゼルト様はそう言って私の髪から手をはなし、今度は私の右手をとって。
まるでおとぎ話の王子様のように、優雅に私をエスコートしながら。
「ならば、無知なお前に私の世界のことを、私が教えてやらねばならないな」
と意地悪そうに言うので、そんな彼に私は。
(もう本当に仕方がない人なんですから…。でもそんな所が大好きです)と、
心の中で思いながら。
身をゆだねるかのように、彼が言っていた冬祭りへと向かった…。
静かに静かに、誰にも気づかれないように…。
今日もあの人のペンギン達が。
この氷と雪に閉ざされた世界を夜の風景へと誘う。
…嗚呼そんな美しい光景に、私は…いえ、
芸術を管理するために創られたアキツシマは唯々その情景を見つめながら。
これから続く、極夜というなかなかあけない夜という世界を。
一つの芸術作品として昇華し、管理者としてこの世界に残すために…。
白紙のキャンパスを一つ取り出して。
はぁーと、一つだけ息をゆっくり吐き出してから。
雪のように白いキャンバスに、黒の鉛筆で…。
この宵闇の情景を描き進めようとしたら、後ろから。
「…よく見もしないで、私の世界を描くのはやめてくれないか」
と少しだけ怒ったように言い放つランゼルト様がいて。
私は思わず。
「ごめんなさい、ランゼルト様…その、えっと…この光景があまりにも美しかったので、
ついこうしてしまいました」と言いながら、
普段あまり着ない白のYシャツに合わせた緑のネクタイを、
大きく揺らす勢いで彼の元に近寄った。
「そう謝るなアキツシマ、お前がこれをみてそう思ったのは…まあ仕方がないことだか、
その私も少しだけ大人げなかった事は詫びよう」
「なにをおっしゃるのですか!!ランゼルト様、詫びなどいりません!」
「でも僕は謝りたいから、ごめんねアキっていうよ」
そう、ランゼルト様はデレた時にしかみせない表情と口調で優しく私に言うので。
「もうラーニャったら、その謝りかたずるいですよ」
「悪かったな。…だがそういう私の事が好きだろう?アキツシマは」
「ええ、そうですよ。大好きですよ…だからこそ少しお聞きしますが、
何故よく見もしないで描くなとおっしゃったのですか?」
私はそう言いながら、
金色にほのかに輝くプラチナブロンドの髪を後ろで一つに縛ったランゼルト様の髪を、
子供のように引っ張れば。
ランゼルト様は少し笑いながらこう言葉を返した。
「それはな、今日から冬祭りがあるからだ」
「冬祭り…ええっー!!そうだったんですかっ!!」
「ああそうだ、まさか知らなかったのか?」
ランゼルト様はそう不思議そうに言いながら、私の黒髪をあやすように撫ではじめたので。
私はそれを愛おしく思いながら、
この絢爛豪華な寝室にあるモノより美しくて、誰よりもカッコいいけど。
どこか畏怖的な恐ろしさがあるランゼルト様の、紫と赤の瞳をじっと見つめて。
こう言い返した。
「ええ、残念ながら。そのような事を私はきいておりませんでした」
「…そうか。なら仕方がないな」
ランゼルト様はそう言って私の髪から手をはなし、今度は私の右手をとって。
まるでおとぎ話の王子様のように、優雅に私をエスコートしながら。
「ならば、無知なお前に私の世界のことを、私が教えてやらねばならないな」
と意地悪そうに言うので、そんな彼に私は。
(もう本当に仕方がない人なんですから…。でもそんな所が大好きです)と、
心の中で思いながら。
身をゆだねるかのように、彼が言っていた冬祭りへと向かった…。
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