激しくしても良いのに

面蛸とおる

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相思相愛の鏡と姫

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「どうした、荒々しく食べてもお前は強くはならないぞ?」

「わっ…分かってますよそんな事、でも形から入りたいのです!」

「そういうものなのか? 人間は不思議な生き物だな」

テスカトルさんはそう面白い生き物を見るように言いながら、私の頭に着けている熊の耳を優しく触れるので。

「もう、くすぐったいですよ」と冗談を言うように彼に言い返せば。

そんな光景をずっと見ていた秋津志摩さんが、立ち上がって。

「今の見ましたかランゼルト様、あれが恋人力ですよね…すごい。私も参考にしたいです」

「なっ…参考などしなくとも、アキは僕だけの恋人じゃないか!! むしろ、君はもう何もこれ以上しなくていい」

「そうですか?」

「そうだよ、しなくて良いよ。だって…そんなに可愛くなられると、さらに君を好きになる邪魔者が増えるし、対処するのも大変だからね」

思ってもない斜めの方向な発言をして、ランゼルトさんは秋津志摩さんの食べ終えて串が無くなった片手を強く掴んで、攫うような勢いでそのまま秋津志摩さんを遺跡の近くに造られたキャンプサイトに似せたレストランへ、連れて行ってしまったので。

「アイツにしては、だいぶ我慢した方だな。俺に秋津志摩を盗られるんじゃないかと、もやもやしてた筈だから」

「えっ!? そうなのですか!! というかそんな事を思ってたんですか! ランゼルトさんは」

「嗚呼…ちなみに、お前にも、もやもやしていたそうだ。可愛い顔だから、可愛いもの好きの秋津志摩がお前を好きになったらどうしよう? だから…先に対処しないとで、お前に悪い事をしたと言っていた」

「…そうだったんですね。でも、ランゼルトさんのあの一件があったからこそ、私テスカトルさんともっと深く繋がれたので、ある意味これで良かったのです」

優しく春の雨のような微笑みを浮かべて、レストランの方に消えていった二人に感謝を告げるように呟けば。

「人間は本当に、不思議な生き物だな…。だが、それだから良いのだな」とテスカトルさんは、歯を見せて嘲るような笑いではなく。

人みたいな、ぎこちないけど私がよくする笑い方を見せるので。

「テスカトルさん!! それですよ、その笑い方です!」

「おおっ…こういう感じか? まだ感覚が掴めぬが」

「はい、そうですよ。ちょっとずつ覚えていきましょうねテスカトルさん」

私はそう答えながら、雲の合間から光をさす太陽を見ながら。
座っていたベンチから立ち上がって、海底の国をイメージしたエリアへと。
その世界観を創り上げた映画の主題歌を口ずんで、仲良く二人で向かった。
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