激しくしても良いのに

面蛸とおる

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相思相愛の鏡と姫

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「それなら、良かったです。ではこの遺跡が真正面から見える橋から、このエリアに入りましょう」

軽快なアコスティックギターの楽しげな、ラテン的音楽が流れる道をテスカトルさんの手を掴んで、無邪気な子供が親より先に行こうとするような素振りでエリアに入れば。

「雪白…そんなに慌てなくとも良いのだが…あっ…ちょっとまてっ…これジャガーの戦士だな」

私に連れられたテスカトルさんは、ぐいぐい前に行く私が見逃したエリアを彩る、壁画や石の柱などをしっかり見ていたようで。
はしゃぐ私の腕を逆に引っ張り返して、石の柱の方に連れてくるので。

「わわわ、そんな風にされたら転けちゃいますよ」

「なっ…それはすまない、加減が難しくてな」

悪気のない声音で、俺が支えてやるからお前は絶対に転けないけどなと、言い放つように答えるので。

私は幼子が不貞腐れて、親に文句を言いだす時の素振りをしながら。

「またそうやって…私をお姫様扱いして、私!! 見た目はこんな感じですが…か弱くないですよ!? 姫じゃないです、とってもおこですよ。だから、お詫びに食べ歩きフード奢ってくださいね。ちょうど近くに串焼きのお肉あるので」

「おいおい、俺からしたら…人間など全てが、か弱い生き物なのだが?」

「…そうですが、私は嫌です。次言ったら嫌いになりますから」

「わかった!! それだけはやめろ…いいな、やめろよ」

今度はテスカトルさんが、小さな子供のような反応をして、一生の御願いだから許してよと謝るやんちゃな少年みたいに、ぺこぺこと手を合わせて、御免なさいをするので。

「わかってくだされば、良いんです。あと…私も大人気ない事をしてごめんなさい。せっかく、テスカトルさんがこちらの壁画を見つけてくださったのに」

目の前に広がる、年季が入ったように一部ひび割れた玄武岩だと錯覚させる程精巧に造られた、ジャガーの戦士が描かれた壁画を指差して。

春の暖かな風のような笑みを浮かべれば。

テスカトルさんは、ギザギザとした見た目めちゃくちゃ怖い歯を見せて、悪巧みしてそうな顔をして、楽しげに優しく笑うので。

「ほんと…テスカトルさんって笑いかた独特ですよね」

「そうか? こういう事で楽しく笑う事の経験がなくてな。 だから、これ以外の笑い方がわからぬのだ」

「そうなんですか…!? なら、今日はいっぱい笑って楽しくしないとですね!! ということは…ここの醍醐味である、串焼きを早く食べなければ、行けませんよ」

私はそうひらめいたように言い放ちながら、テスカトルさんの返答を聞かずに。

串焼きが売っている、遺跡探索用の資材を運ぶトラックのような外観のフードショップに向かった。
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