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小さな争いの騎士には珈琲を

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ザワザワとしたノイズが混じったような音が、ラジオから聞こえる…。

この現象は、隆虎さんと再会した日の次の日からずっと続いていて。

俺は心の中で、

(流石に…あれだけ怪現象が起これば、ラジオも変になるよね…やっぱり買いなおすべきかな…でもこのラジオ、デザインがレトロでとても気にいってるから…修理の方が良いかな)と、

一週間程、事あるごとにそう思いながら…。

店のグラスを一つずつ丁寧にふきんで拭いて、バーに来てくれるお客様を待てば。


カラーンコローンという、扉につけてあるベルが鳴り響き。


「今日も俺が一番だな」と言いながら、

ニヤリと笑う隆虎さんが店に入ってきたので…。


俺はいつものように、口元に柔らかな笑みを見せて。


「今晩は隆虎さん、今日もウィスキーですか?」とそう彼に問いかければ。

「当たり前だろう。お前は俺専用のバーテンダーなんだから、
俺がきたらウィスキーで良いんだよ」

「ちょっと隆虎さん、俺専用ってなんですか!?
あとここ最近ちょっと俺様感強いんですけど…。前の紳士さんは何処にいったんですか?」


俺はそういかにも俺様な態度で話す隆虎さんに、文句を言うかのように問いかければ。

「…これが今の俺の素なんだけど、
まあ楓が…俺様感が強いのが嫌っていうなら…。偽りの俺で会話してやっても良いけど?」

「なっ…!!だったら、このままで良いです」

「あっそう、なら良いや。という事でウィスキーを一杯作ってくれよな」


隆虎さんはそう意地悪く言いながらも、
どこか優しい目で俺をじっと嬉しそうに、見つめてくるので。

「…俺の事を本当に、本当に大切に思ってくれてるんだな…。だから、
本当の自分で俺と接してくれてるのか」と。

俺は聞こえるか聞こえないか分からない声で、小さく呟いた瞬間。

ラジオから、突如「緊急ニュースです!!」

という緊迫感迫る音声が流れて、

俺は何事だと思い、その音に耳を傾けると。

どうやら、この街でとても有名な財閥の一つが、
身内感でのトラブルによって一族全てが殺されてしまい…。

そして、その財閥にあった資産も雲隠れしたように、
どこかに消えてしまった…という悲惨で謎のあるニュースだったので。


「なんて酷い事件なんだ…一体誰がこんな事をするんですか?」

と怒るように言えば。

「…こんなことほんと誰が、するんだろうね」

「ええっ…ほんとそうですよっ…って、まさか…隆虎さんじゃないですよね?」


俺は彼にそう不安そうに言いながら、
グラスにウィスキーを注いで彼の目の前に出せば。

「…楓、俺はこの前も言ったけど人じゃないんだ…。
そう人じゃないんだよ、だからこれ以上は聞くんじゃねぇ…良いな」

「わかりました…すみません。俺、その…いえ、何でもないです…」

隆虎さんの返答に俺はそう謝りつつ答えれば。

「フラント駄目だよそいうの、ナンセンスでつまんないよ」と、

何処からともなく見た目だけは可愛いイヴァンの声が聞こえて。

「イヴァン様何故!?ここに…」

と隆虎さんは血相を変えたように声がする入り口に振り向けば。

そこには黒髪を緑のリボンで可愛く一つに縛った海兵さんのような格好のイヴァンと、
同じ背丈の金色のクセ毛が元気よくはねた髪を、片耳側から可愛く三つ編みした、
猫のようにつりあがった大きい緑の目と、
まだら模様のように見えるそばかすがとっても少年ぽい子がいたので。

「ルドっ…!?お前…来たのか!!」
「だよ、フー君。ルド君来ちゃったよ、
だからフー君遊ぼう!!一緒にみんなんで乱交パーティーしよう」
「えっ!?乱交パーティー!!駄目ですよ!!子供はそんな事したら、絶対駄目です」

突如やってきた、少年がまさかのぶっ飛び発言を言ったので。
俺は流石に駄目だよという顔を見せて、そう叱るように言えば。

「ええっ…駄目なの。ちぇっ…つまんない、もっと楽しくしたかったのにな。
ああでも、フー君。こんな奴放り投げて僕のところにきて…もちろんいいよね?
だって僕のが可愛いでしょ」
「ちょっと、君何言ってるんですか…?確かにあなたの方が年齢的にも可愛いですが…」

「いや、楓の方が何倍も可愛いぞ。だが…すまない」

隆虎さんはそう言い放ちながら席をたって、ルドの方に歩き出すので。

「隆虎さん…!?何故…どうして?」と俺は焦ったように言葉を吐き出せば。

「何故だと思う?何故だと思うよね、そりゃそうだよね。
だからバカにもわかりやすく教えてあげる。僕はルドルフ、
フー君とは君なんかよりも長い関係のセフレだよ」

と金髪の少年ルドはそう言って。

隆虎さんの腕をとって、愛人のような素振りを見せながら、
俺を嘲笑うかのようにバーから出ていってしまったので。

バーに取り残された俺は、

「そんな…セフレって…。嘘ですよね…でも…」

と衝撃的な出来事に、頭を混乱させながら。

目に涙を浮かべて、置かれたウィスキーをただただじっと見つめる事しか出来ず。

「あ~あ、浦霞楓可哀想、可哀想で可愛いってこいう事だね。
ザハールにも教えておかないとな」

というイヴァンのおふざけも、耳に入らなかった。





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