3 / 22
支配の騎士と夜空
03
しおりを挟む
「むくれてないです」とぶっきらぼうに、俺はそう答えると。
「そうなの?そうと思えないんだけどな…」と、
隆虎さんは俺の言葉にそう返しながら、ポケットから見たことのない銘柄のタバコを一つ取り出して、
まるで、映画の一幕のような雰囲気を漂わせながら、口に咥えて。
「…まあいいや。楓がそう言うならそうしておくよ」と小さな子をなだめるかのような声音で、そう呟くので…。
「是非共、そうしてください」と、
タバコを咥えながらそう言う隆虎さんに、俺は唯々笑いつつ、口に咥えた彼のタバコに、火をつけた…。
そして、しばらくして。
何本かタバコを吸い終わった隆虎さんは、まだ残っているタバコのケースを胸ポケットにしまいながら、
俺にこう話かけた。
「そういえば、楓は今日の夜、予定とかはあるのかな?」
「…予定ですか?…特にはないですが」
「そうか。なら楓さえ良ければ、少し星を見に行かないか?」
俺の返答にそう返しながら、隆虎さんは俺の右手を優しく掴んでくるので。
「えっ、その…あの、困ります」と、
突然のことでパニックになった俺は、そうシドロモドロになりながら答えると、
隆虎さんは一瞬だけ機嫌の悪い表情を見せたが。
すぐさま、愛おしいものを見るような顔を浮かべ、
俺の右手の甲に、まるで騎士が主君へと捧げるようなキスを落としながら…。
「俺では、駄目か?」と弱く呟くように言うので。
俺は普段とはうって変わったその態度に、胸をぎゅっと掴まれたような気持ちになりながら、
「分かりました。今日は11時に締めるので、店の裏で11時30分ごろ来てください」
「楓、ありがとう」
俺の返答に満足した隆虎さんは、握っていた手を離しながらそう言い。
続けて、
「…きっと寒くなると思うから、冷えない格好で来るんだよ」と、付け加えるように言いながら。
「じゃあ楓、11時30分になったら向かいに来るからな。途中で行けなくなったとかは、絶対にするなよ」と、
最後は茶化し気味に言ってから、隆虎さんは席を立つので。
「ええ、分かりました。ちゃんと行きますから、隆虎さんも俺のことちゃんと迎えにきてくださいね」
「ああ、もちろん。俺は約束だけは必ず守る男だから、安心しろよ」と、
そう言いながら隆虎さんは懐から財布を出し、そこからお札を一枚だけ出して…。
飲み終わったカクテルグラスの横に、静かに置きながら、
そのまま俺の方を、振り向くことなく出て行った。
ーーなので俺は、唯々出て行く隆虎さんに、
「ありがとうございます。星見るの楽しみです」と、
言うことしか出来なかった。
「そうなの?そうと思えないんだけどな…」と、
隆虎さんは俺の言葉にそう返しながら、ポケットから見たことのない銘柄のタバコを一つ取り出して、
まるで、映画の一幕のような雰囲気を漂わせながら、口に咥えて。
「…まあいいや。楓がそう言うならそうしておくよ」と小さな子をなだめるかのような声音で、そう呟くので…。
「是非共、そうしてください」と、
タバコを咥えながらそう言う隆虎さんに、俺は唯々笑いつつ、口に咥えた彼のタバコに、火をつけた…。
そして、しばらくして。
何本かタバコを吸い終わった隆虎さんは、まだ残っているタバコのケースを胸ポケットにしまいながら、
俺にこう話かけた。
「そういえば、楓は今日の夜、予定とかはあるのかな?」
「…予定ですか?…特にはないですが」
「そうか。なら楓さえ良ければ、少し星を見に行かないか?」
俺の返答にそう返しながら、隆虎さんは俺の右手を優しく掴んでくるので。
「えっ、その…あの、困ります」と、
突然のことでパニックになった俺は、そうシドロモドロになりながら答えると、
隆虎さんは一瞬だけ機嫌の悪い表情を見せたが。
すぐさま、愛おしいものを見るような顔を浮かべ、
俺の右手の甲に、まるで騎士が主君へと捧げるようなキスを落としながら…。
「俺では、駄目か?」と弱く呟くように言うので。
俺は普段とはうって変わったその態度に、胸をぎゅっと掴まれたような気持ちになりながら、
「分かりました。今日は11時に締めるので、店の裏で11時30分ごろ来てください」
「楓、ありがとう」
俺の返答に満足した隆虎さんは、握っていた手を離しながらそう言い。
続けて、
「…きっと寒くなると思うから、冷えない格好で来るんだよ」と、付け加えるように言いながら。
「じゃあ楓、11時30分になったら向かいに来るからな。途中で行けなくなったとかは、絶対にするなよ」と、
最後は茶化し気味に言ってから、隆虎さんは席を立つので。
「ええ、分かりました。ちゃんと行きますから、隆虎さんも俺のことちゃんと迎えにきてくださいね」
「ああ、もちろん。俺は約束だけは必ず守る男だから、安心しろよ」と、
そう言いながら隆虎さんは懐から財布を出し、そこからお札を一枚だけ出して…。
飲み終わったカクテルグラスの横に、静かに置きながら、
そのまま俺の方を、振り向くことなく出て行った。
ーーなので俺は、唯々出て行く隆虎さんに、
「ありがとうございます。星見るの楽しみです」と、
言うことしか出来なかった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説



ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる