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しおりを挟む「…どうしよう、迷ってしまった」
そう走りながら黒髪を腰まで綺麗に伸ばした、美少女のような、美少年の姫氏原雪白は呟き。
自分を犯し殺そうとする相手から逃げる為に、迷い込んだ山奥の中で。自分が完全に道を失ったという事を、悟り。
「はあぁ…ほんとどうしよう、無事生きて帰れるのかな?」
と小さく呟きながら『まだ望みはあるはずです』と願うように…。
「いえ、こんな事を思ったらダメだ。そうだよね可愛いふくろうさん、狐さん、ジャガーさ…ん?」
「ってジャガー!? わわわわ逃げないとっ!!」
雪白は自分を心配して集まる可愛らしい動物と一緒に突如現れた、金のような銀の髪を持つ、肩まで伸びたクセのある髪に黄色と黒のまだら模様の獣耳が生えている、背筋が凍りつくほどの絶世のワイルド系美青年に驚き。
大きく叫びながら、うさぎのように逃げ出そうとすれば。
「おいっ…何故逃げる?」と獣耳青年に強く言われ、雪白はその言葉に。
「あわわわわわわっ…助けて紫士兄さん私、心の臓をえぐりだされて、食べられるんだ」
と自分の死を感じて、ここには居ない兄に助けを求めると…。
「なっ…そんなことはまだしない。だが確かに、お前は美味しそうではあるな」
雪白の言葉に男はそう言いながら、怯える雪白をゆっくりと抱き寄せて、優しくお姫様抱っこをするので…。
「…やっぱり、もうダメだ…。私はこんな場所で終わる夢の住人なんだ」
「だから、そうはやまるな!! せっかく良い匂いがするのに、そう喚くと匂いが嗅げないだろう?」
「へぇっ…匂い?」
雪白は男の発言に驚いたように言い返しながら、自分が知らぬ間にお姫様抱っこをされている事に気がついて、あたりをちらちらと見つめれば。
「そう匂いだ、お前の匂いはとても落ち着く…癒される」
「そうなんですか? 良い匂いか…うーん、私ではわからないですけど。よく動物さんたちに好かれるから、よほど良い香りなんですかね」
「それは…もうたまらなく良い香りだ。だから、俺の双子の兄貴が管理する地に無断で入ったお前を殺さずに、ちゃんと帰してやろう」
男は物騒な発言をしながらも、何処か戯れるように言い放つので。
「ほぎゃっ…まさか殺す気あったんですか!!」
「…少しはあった、だが今はない。そんな事よりお前の名はなんだ」
強く言い放ち、男は抱きかかえた雪白を抱えて飛び上がり。
星空で輝く夜空を背にして、何処かの神話の神々のように空を舞いながら…。
「…沈黙は死に繋がるぞ。生きて帰りたければこの俺、テスカトルに名を告げる事だな」
「そんな風に脅さないでくださいよテスカトルさん。私の名は姫氏原雪白です。気安く雪白とよんでください」
「雪白かっ…お前に似合いの名だ。そして、俺の名前とも似合う名でもある」
「?」
テスカトルはそう何処か照れくさそうに呟きつつも、鬱蒼と生い茂る森の上空を鳥のように飛ぶので。雪白はこの現状に驚きながらも、内心では…。
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