ブラックコーヒーの海に砂糖をおとせ

面蛸とおる

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人生の苦楽のようなブラックコーヒーに砂糖をおとせ

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ブラウンで無個性に近いほどシンプルなテーブルと椅子が並ぶ、
都心の地下街にある少しだけ穴場の喫茶店の中で、
俺は小さく「どうしよう」と呟いて。

黒のビジネスバックから、緑のスマホケースに入れた愛用のスマホを取り出して。

この場所に、ここ最近ずっと話したくてたまらない…。
会社の同僚で、俺なんかより頭も見た目も良く。
ニッコリと笑えば、どんな相手もイチコロといえるかのような。
会社きっての黒髪好青年な川咲明かわさきめいに、

「話があるんだけど…今すぐ喫茶カティーピカに来れる?」と連絡すれば。

「話ですか…わかりました。
今そちらに向かいますね…というかその俺も#暗さん_あんさん__#とお話したかったので、
ベストタイミングですよ」と明はそう答えて、ぶつりと電話を切るので。

俺はツーツーと切れた電話の音を聞きながら、喫茶店のウェイターを呼んで。

ウェイターが「御注文は?」と優しく問いかける声と同時に、
スマフォをテーブルの上に置いて。

「アイスコーヒーを一つください」とそう言って、彼が来るまでの時間を。

冷たくて、ほろ苦い…。
人生の苦楽のような、暗い色のブラックコーヒーを。
俺は人生の苦楽に怯えるかのように、ちびちびとストローでゆっくりと半分程飲みほせば。

「すみません、お待たせしてしまって」
と明るくて、低い男らしい明の声が耳に聞こえてきたので。

「いや、そんなに待ってない…というか、むしろ急に呼んでこっちがごめんだよ」

俺はそう謝るように言いながら、
灰色系統のビジネススーツを身にまとった明の顔に視線を向ければ。

その視線にすぐ気がついた明は、

「暗さん、俺の顔に何かついてます…?」

と不思議そうな声音で聞いてくるので。

「いや、別に何にもついてないよ…というか、座りなよ!!流石にずっと立ってるのはね…」
「そ、そうですね。確かに、店員さんが困ってしまいますね…」
「だろ、だからこっち座りなよ」

俺はあわあわとした声を出しながら、俺と向き合う位置になるように明を座らせて。

「これ、メニューな」とそう無愛想に白色のメニュー表を渡せば。

そんなぶっきら棒な俺が、どこかおかしかったのか分からないが…。

「ちょっと暗さんっ…そんな風に、子供っぽくしなくてもいいですよ。ほんと暗さんは面白いな」とクスクスと笑ってメニューを受け取るので。

「子供っぽくなんかないから…というか…もう、そいう風に笑うなよ…」
「嗚呼、すみません…不快ですよね、ほんとごめんなさい気が利かなくて」
「えっ…あっ…その、違うんだ…。ほんと違うんだ…むしろ、
そいう風に笑われると…カッコ良すぎて、ドキドキするから」
「…それは、さらにすみませんですね」

明は俺の発言に顔を真っ赤にさせながら、照れたようにそう言ってから。
近くに来ていたウェイターに、アイスティーを一つくださいと注文するので。

(俺、うっかり何を言ってるんだよ馬鹿っ…)と心の中だけで、
反省するかのように言いながら。

残しておいたアイスコーヒーを、ストローで一気に飲みほして。
空いたグラスをテーブルの隅に追いやれば。

一連の行動をずっと見ていた明は、そんな俺に…。



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