2 / 8
2
しおりを挟むいつも着ている黒のスーツに、ネクタイを外したʏシャツ姿で、髪も縛っていない…という。
私からしたらとてもだらしがない姿に、なっていたので…。
私はとてもショックを感じ、今すぐにでも死んでしまいそうな顔になりながら、
こう言葉を吐く。
「…なんてことだ。こんな姿で、アキに逢わないと…いけないなんて…。最悪すぎて、自分を殺したい」
と自分の不甲斐なさに怒りを込めながら、続けて…。
「だが、もう扉の前にアキツシマが来てしまった以上。服を直すのも、髪を縛るのも、もはや手遅れ…そう手遅れだ」
と私は嘆くかのように、呟き。
愛しのアキにこんな格好のつかない私を、見せなくてはいけないという事を、
心の中で無理やり正当化させながら。震える手を抑えて、自室の扉を開けると…。
扉の前には、紺色の着物を身にまとったアキツシマが居て。
私はアキツシマに、心配をかけさせないようにせねばと思い…。
無理やり笑みをつくりながら「…アキツシマ、今日は良い朝だな」と言葉をかけると。
アキツシマはひどく驚いた顔を見せて…。
「ランゼルト様、どうされたんですか?顔色がとても悪いようですが…」
と今にでも泣き出しそうな声で、そういうので…。
私は、アキツシマのそんな言葉に
「すまない…アキ。私は大丈夫だから…。もう時期に良くなるから、心配はするな」
と言い放ちながらぎこちない笑みを見せて、アキツシマの頰を撫でると…。
ポロポロと、アキツシマの目から涙が溢れ。
「ランゼルト様…嘘つかないでください…。本当は大丈夫じゃないのに…私では、私などではお役にたてないんですか?」
「…アキ。そいう訳ではないが…」
「だったら、ランゼルト様。辛い時は辛いって、言ってください…。そんな今にでも死にそうな顔をして、私が騙せると思うんですか!」
そうアキツシマは言って、私の胸に抱きつき。
後ろに手を回しながら、
「…だからランゼルト様。私ができる範囲で看病しますから。どうか私に身を委ねてください…」
と目に涙をためて、言われてしまえば…。
私は何も言い返すことが出来ず。
ーー唯々、献身的なアキツシマにその身を預け、小さな彼に引きずられながら…。
近くにある革張りの椅子へと、向かった。
そして、アキツシマは座ることもままならない私を、思ってかは分からないが…。
私の体を優しく持ち上げ、柔らかなクッションが敷かれた場所へと、座らせてくれたので…。
私はその柔らかな感覚を感じながら…。重い体を預けるかのように、椅子の背にもたれ…。
ため息を一つだけつくと、そのため息を聞いたアキツシマは…。
「少しは、良くなりましたか?」
と不安で仕方がないような声音で、話しかけてきたので…。
「ああ。アキのおかげで、少し良くなった」
と私は答え。体をリラックスするために、ゆっくりと全身から力を抜いた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる