星を見るにはまだ早い

面蛸とおる

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チョコレートよりも俺を味わって

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×××

「おい……少しは加減しろよ、馬鹿。あとっ……声がっ……擦れて、そんなにっ……しゃべれねぇんだけど」

「えっ…!? ああ、おはよう。起き抜けに元気だね」

ふと起き抜けにアレクセイは隣で寝転がっているヴィクトルに、そう叩き起こされるので。

悪びれる事もなく、いつも見せる飄々とした態度で返せば。

「元気だねっ……じゃねぇよっ……!! 今日依頼あるのによ、どうすんだよこれっ……」

「どうすんだよこれって言われてもね、君の代わりに僕が依頼者と話すで良いじゃないかな?」

「なっ……アンタが話すって、良いけどよ……あんまり依頼者を怯えさせんなよ。アンタ俺以外と話す時、すごく人間味がないぐらい無表情かめちゃくちゃ怖いかの二択だからさ」

ヴィクトルはそう掠れた声で返しつつ、本当に大丈夫か?と疑うような視線をアレクセに向けながらベットから静かに降りて。

ベットサイドに綺麗に畳んで置かれていた服に腕を通して、いつでもここから出られるように着替え始めるので……。

アレクセイもそれに続くように、ベットから勢いよく降りて。

「えっ……!? やだなコーティくったら、そんなに心配しないでよ。 そんな風な態度なんてしないさ……。まあ相手が、僕の気分を害さなければの話だけどね」と、おちゃらけたテンションでそう返してから。

──今日の仕事を進める為に、私服よりも何十倍もカジュアルな黒のカーディガンに紫の長袖を合わせた上着を羽織って。

近くに置いておいた、大好きなヴィクトルから貰った大切なチョコレートを。

箱から一つだけ取り出して、パクリと味わいながら……。

残りはいつでも取り出せれるように、そっとカーディガンのポケットにしまってから、こう揶揄うように話かける。

「やっぱり、チョコレートよりも……ヴィクトルの方が好みかな。だって何度も味わっても、飽きがこないから……あきだけに、なんてね」

「ばっ……かっ……!? もう何言ってんだよ、惚気た事言いやがって、あと最後のネタ意味わかんねぇよ」

「ああ、ごめん。最後のは聞かなかった事にしてよね……自分でもスベったなって思ったからさ」

アレクセイはそう照れた顔をして、少し恥ずかし気に答えるので。

ヴィクトルはそれに対して、くすくすと笑いながら嬉しげに。

「良いよ聞かなかった事にしとくからさ、さっきの言葉もう一回言ってよ」とキラキラとした目で願うように言うので。

アレクセイは「チョコよりもヴィクトルの方が好みだよ」と、嘘偽りのない言葉でそう返すのだった……。
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