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第3話セーの扉
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なんとそこには、湖ではなく…。
こことは違う絵が描かれた回廊が続いていたので、
俺と紫士はお互いを見つめあいながら。
この怪奇に唖然となり、何か言おうと思った言葉ですら…。
「えっ…」という言葉に書き換わってしまったので。
俺は新たな回廊をゆっくりと進みながら、
(ここまで変わるなんて…ほんとさっきのは、一体なんだったんだろう…)
とさらに深まる謎に、頭を抱えつつ。
紫士の方に視線を向けると…。
そこには口元に手を置いて、何かを考える紫士が居たので。
(やっぱり姫は、こいう風に真面目な表情すると…かっこいいよな。
まあでも、そこがギャップ萌え感あって、すごく良いんだよな)
とムフフと笑うように、そう思えば。
「騎冬…そんな可愛い顔してどうしたの?私に惚れたのかな?」
「えっ!?あっ…ちがう、あの…その、なんでもないっ!!」
「ふーんそうなんだ。そんなに顔を真っ赤にして言われてもね…。というか、こんな風に話してるけど。こんだけ歩いて、何もないなんて…ちょっと逆に不思議だと思わない」
紫士はそう言って足をピタリと止めるので、俺も彼に合わせて止まれば…。
ピンポーンと、この場所に相応しくない。
クイズ番組とかで聞こえる回答ボタンのような音が鳴り響き。
それと同時に、
革靴のカツカツという靴音と貴金属のアクセサリーの擦れる音が聞こえてくるので。
俺達は、薄暗い回廊の奥の方を睨みつけるかのような勢いで、
俺達の方に向かってくるであろう人物に視線を向けると…。
その人物は遠く離れていても、どうやらこちらの事などすべて見えているかのように。
「ああ、ハズレか…。なんだよつまらんな、折角黒いアレがこの俺様の神殿に来たと思ったのに…。ここでまさかハズレをとるなんて、テスカトルの奴…さては抜け駆けしたな」
とゲームに負けて悔しいなと喚く子供のようなセリフを言い捨てるので。
俺はそんな傲慢な声で低く言う、
俺たちより年上だと思われる人物に殴りかかろうと。
足を一歩前に出したら…。
パチリと指がなる音と一緒に、周りが一気に明るくなり。
「くっ…眩しい」と俺は暗闇から明るい時に出た時のような、
クラクラとした反応を見せてその場に倒れ込めば。
知らぬ間に俺の目の前に、この元凶を起こした人物が来ており…。
「くそっ…やりやがったな!!」と、俺は吠えるように相手に噛み付けば。
金のような銀色の髪を綺麗に後ろで縛った、鋭く、まるでジャガーのような獰猛さのある。
血のような赤い瞳を持った、この世界で見たこともないほど美しくて、かっこいいとしか言えない、アステカの民族衣装のような服を、身にまとった前世の美男子がそこにいたので。
「嘘っ…こんなの、ありえない…」と思わず、現実離れした容姿の彼にそう言えば。
「嘘?人間如きが生意気だな…。お前らなんか俺様の贄にしかならない分際なのにね。ほんとこっちがありえないんだけど」
男はそうケラケラとバカにするように言いながら、
倒れている俺の背を思いっきり踏むので。
「がはぁっ…テメェっ…」と俺は痛みに耐えるかのように、そう言葉を吐けば。
「私の騎冬に何をする!!このうじ虫っ…!!!!!!!」
と激昂した人間にしか出せないような声を出しながら、
紫士は俺を踏んずけている相手にタックルを決めるので。
「なっ…!?くそっ…これだから、黒髪蒼目は嫌いだんだよ。黒いアレといい、お前も気にくわないぞ」
「なんだと!?気にくわないのはこっちもだ!!この蛆虫クソやろう、よくも私の騎冬にゴミみたいな靴で、クソみたいな跡をつけやがって…。お前は絶対にここで、殺す殺す殺す殺す!!!」
狂気に溢れた声で紫士はそう畳み掛けるように言いながら、
懐からナイフを取り出して躊躇なく相手に振りかざすので…。
流石にそれには俺も驚いて、
「姫っ!!駄目だよそれはっ…!!」と叫べば。
「駄目じゃない!!だってこれも、
騎冬の為だよ?そう君の為に…しなくちゃいけない事だよ」
「紫士、そうだとしても…駄目だよ」
俺はそう強く言って、痛む背を抑えながら立ち上がれば。
俺達のそんなやりとりを、つまらない寸劇を見ている観客のように。
「で、そのやりとりはそれで終わり?ほんと人間って、
面白くもない事するよね。てか、刺したいなら刺せばいいのに」
男はそう言って、紫士が持っているナイフを奪いとって、
自分の胸にブスリと二回、にこにこ笑って刺すので…。
俺は声にならない声を出して、赤く染まる彼の胸に恐怖を覚えて。
後ろに一歩下がると。
「おおっ…?へぇっ…まさか、お前、ここに来たときビリっときた奴だな…」
「なっ…なんで、その事を知ってるんだよ!!お前がっ…!!」
「さて、何で知っているのかな?あはははっ…まあお前に知る権利はないけどね」
男はそう嬉しそうに笑いながら、
血で真っ赤に染まったナイフを紫士にポいっと投げて、返して…
「セーの試練は合格だよ。三騎冬、次もこの俺様の為に頑張るんだな」
と意味の分からない事を言い放って。
手から黒い煙だして、あたり一面を煙だらけにするので…。
「この煙っ…!!姫雪白の時と同じ!!」
と俺はそう言いながら、紫士がこの男に連れて行かれないように。
ぎゅっと強く離れて行かないように、抱きしめれば。
「騎冬…こんな事しなくてもいいのに」と紫士は何処か照れ臭そうに言うので。
「…姫まで攫われたら嫌だから」と深刻な顔をして言い返せば。
「ああっ…そうだね。私もこんな奴に攫われるのはごめんだよ」
と紫士はそう答えて、俺の背に手を回して。
この黒い煙が去るまで…ずっと、俺の側から離れず。
唯々静かに笑いながら、この怪奇に身を任せるので…。
俺もそれと同じような動きをしつつ、
(俺達と離れてしまった雪白は今どうしているのだろうか…)
と思いながら、目を瞑って。
「姫雪白…そっちは、大丈夫? 何にも起きてないよね…」と、
遠く離れてしまった雪白に向けて俺はそう言った。
こことは違う絵が描かれた回廊が続いていたので、
俺と紫士はお互いを見つめあいながら。
この怪奇に唖然となり、何か言おうと思った言葉ですら…。
「えっ…」という言葉に書き換わってしまったので。
俺は新たな回廊をゆっくりと進みながら、
(ここまで変わるなんて…ほんとさっきのは、一体なんだったんだろう…)
とさらに深まる謎に、頭を抱えつつ。
紫士の方に視線を向けると…。
そこには口元に手を置いて、何かを考える紫士が居たので。
(やっぱり姫は、こいう風に真面目な表情すると…かっこいいよな。
まあでも、そこがギャップ萌え感あって、すごく良いんだよな)
とムフフと笑うように、そう思えば。
「騎冬…そんな可愛い顔してどうしたの?私に惚れたのかな?」
「えっ!?あっ…ちがう、あの…その、なんでもないっ!!」
「ふーんそうなんだ。そんなに顔を真っ赤にして言われてもね…。というか、こんな風に話してるけど。こんだけ歩いて、何もないなんて…ちょっと逆に不思議だと思わない」
紫士はそう言って足をピタリと止めるので、俺も彼に合わせて止まれば…。
ピンポーンと、この場所に相応しくない。
クイズ番組とかで聞こえる回答ボタンのような音が鳴り響き。
それと同時に、
革靴のカツカツという靴音と貴金属のアクセサリーの擦れる音が聞こえてくるので。
俺達は、薄暗い回廊の奥の方を睨みつけるかのような勢いで、
俺達の方に向かってくるであろう人物に視線を向けると…。
その人物は遠く離れていても、どうやらこちらの事などすべて見えているかのように。
「ああ、ハズレか…。なんだよつまらんな、折角黒いアレがこの俺様の神殿に来たと思ったのに…。ここでまさかハズレをとるなんて、テスカトルの奴…さては抜け駆けしたな」
とゲームに負けて悔しいなと喚く子供のようなセリフを言い捨てるので。
俺はそんな傲慢な声で低く言う、
俺たちより年上だと思われる人物に殴りかかろうと。
足を一歩前に出したら…。
パチリと指がなる音と一緒に、周りが一気に明るくなり。
「くっ…眩しい」と俺は暗闇から明るい時に出た時のような、
クラクラとした反応を見せてその場に倒れ込めば。
知らぬ間に俺の目の前に、この元凶を起こした人物が来ており…。
「くそっ…やりやがったな!!」と、俺は吠えるように相手に噛み付けば。
金のような銀色の髪を綺麗に後ろで縛った、鋭く、まるでジャガーのような獰猛さのある。
血のような赤い瞳を持った、この世界で見たこともないほど美しくて、かっこいいとしか言えない、アステカの民族衣装のような服を、身にまとった前世の美男子がそこにいたので。
「嘘っ…こんなの、ありえない…」と思わず、現実離れした容姿の彼にそう言えば。
「嘘?人間如きが生意気だな…。お前らなんか俺様の贄にしかならない分際なのにね。ほんとこっちがありえないんだけど」
男はそうケラケラとバカにするように言いながら、
倒れている俺の背を思いっきり踏むので。
「がはぁっ…テメェっ…」と俺は痛みに耐えるかのように、そう言葉を吐けば。
「私の騎冬に何をする!!このうじ虫っ…!!!!!!!」
と激昂した人間にしか出せないような声を出しながら、
紫士は俺を踏んずけている相手にタックルを決めるので。
「なっ…!?くそっ…これだから、黒髪蒼目は嫌いだんだよ。黒いアレといい、お前も気にくわないぞ」
「なんだと!?気にくわないのはこっちもだ!!この蛆虫クソやろう、よくも私の騎冬にゴミみたいな靴で、クソみたいな跡をつけやがって…。お前は絶対にここで、殺す殺す殺す殺す!!!」
狂気に溢れた声で紫士はそう畳み掛けるように言いながら、
懐からナイフを取り出して躊躇なく相手に振りかざすので…。
流石にそれには俺も驚いて、
「姫っ!!駄目だよそれはっ…!!」と叫べば。
「駄目じゃない!!だってこれも、
騎冬の為だよ?そう君の為に…しなくちゃいけない事だよ」
「紫士、そうだとしても…駄目だよ」
俺はそう強く言って、痛む背を抑えながら立ち上がれば。
俺達のそんなやりとりを、つまらない寸劇を見ている観客のように。
「で、そのやりとりはそれで終わり?ほんと人間って、
面白くもない事するよね。てか、刺したいなら刺せばいいのに」
男はそう言って、紫士が持っているナイフを奪いとって、
自分の胸にブスリと二回、にこにこ笑って刺すので…。
俺は声にならない声を出して、赤く染まる彼の胸に恐怖を覚えて。
後ろに一歩下がると。
「おおっ…?へぇっ…まさか、お前、ここに来たときビリっときた奴だな…」
「なっ…なんで、その事を知ってるんだよ!!お前がっ…!!」
「さて、何で知っているのかな?あはははっ…まあお前に知る権利はないけどね」
男はそう嬉しそうに笑いながら、
血で真っ赤に染まったナイフを紫士にポいっと投げて、返して…
「セーの試練は合格だよ。三騎冬、次もこの俺様の為に頑張るんだな」
と意味の分からない事を言い放って。
手から黒い煙だして、あたり一面を煙だらけにするので…。
「この煙っ…!!姫雪白の時と同じ!!」
と俺はそう言いながら、紫士がこの男に連れて行かれないように。
ぎゅっと強く離れて行かないように、抱きしめれば。
「騎冬…こんな事しなくてもいいのに」と紫士は何処か照れ臭そうに言うので。
「…姫まで攫われたら嫌だから」と深刻な顔をして言い返せば。
「ああっ…そうだね。私もこんな奴に攫われるのはごめんだよ」
と紫士はそう答えて、俺の背に手を回して。
この黒い煙が去るまで…ずっと、俺の側から離れず。
唯々静かに笑いながら、この怪奇に身を任せるので…。
俺もそれと同じような動きをしつつ、
(俺達と離れてしまった雪白は今どうしているのだろうか…)
と思いながら、目を瞑って。
「姫雪白…そっちは、大丈夫? 何にも起きてないよね…」と、
遠く離れてしまった雪白に向けて俺はそう言った。
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