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面蛸とおる

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やっと逢えたね

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「心臓に悪いねかっ……あっ……!? そう言えばヴィクトル、足の痛みはどうなの? 君のはしゃぎようで、すっかり忘れてたんだけど。どんな感じなのかな」

「……へぇ、何だよ覚えてたのかよ。足の痛みか……俺痛いのには慣れ過ぎてるから、正直よくわかんないけど。歩くとちょっと痛いって感じだけどさ……。それよりも心臓がずっと変な感じでっ……」

俺は自身の心臓の上に手をゆっくりあてて、そう素っ気なく言葉を吐いてから。
近くにあった柔らかで真っ白なベットに腰掛けて。

──俺の事を心配してくれる初めての他人に、弱音を吐いても良いのだろうか?
それとも弱音を吐かずに、その優しさを突っぱねるべきなのだろうか?

いやでも……弱った俺をさらに虐めて、アイツらにみたいに酷い事してくるかもしれない。
もしそうだったら、こわっ……い? いや違う怖くないっ……むしろアレクセイになら酷い事されても良いと思える。

だってよくよく考えたら彼は、俺が辛くて痛い出来事があった時に思い浮かべる。

『銀髪の怪しいドSの美青年』に物凄く近かったから、今日起きた身体的な痛みは全部彼にされたんだと思えば。

足の痛みでさえも、甘く甘美なものに感じてきて……。
自分のマゾヒスト的な欲求に、情けなさを感じつつも。

痛い目にしか合わない人生でしか生きれない自分が、唯一救われる為にそうなった嗜虐的思考を少しずつ解放しながら。

「痛くて、苦しいっ……でも、これはいつもあるから大丈夫。我慢出来るから、アンタが心配する事はないからな」

そう強く言い放ちながら、精神的ストレスで不規則に脈を打つ心臓の痛みに甘く耐えつつ。
毅然とした態度を見せて、俺は本当に大丈夫だよと言うように、にこりと笑って見せれば。

「……そう言われても、心配するよ。というかむしろ……治してやりたい。いや違う、治させろ! 僕はもう我慢ならないんだ!! 大切な君が、僕以外の誰かに痛めつけられてるのは……!!ああもう、耐えられない!! 早く君から汚い証を消したい……」

アレクセイは心の叫びを吐き出すような声音で、言葉を叩きつけるように言い放ってから。
ベットに腰掛ける俺を、勢いよく押し倒して……。

俺のブラウン色のコートを綺麗に脱がしながら、ネクタイと土埃などで少し汚れてしまったカッターシャツも外して行くので。

「なっ……やだっ……やめて、服脱がさないでっ……酷いからっ……見られたくない」と、俺は彼に素肌が見られる事に恐怖を感じながら、ふるふると首を横に振ってそう答えてから。

心の中で続けてこう叫んだ。

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