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面蛸とおる

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やっと逢えたね

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「部屋があったの? てっきり……無いのかと思ったんだが」

「何でそう思うのかな……? 私の事は信用出来ない? いや……ごめん、そうだね。まだ逢ったばかりだから……当然だったね」

「あっ……えっ……その、だってさ……。部屋があったらもう、チェックイン済んでるって思ったから」

「ああ、成程ね。ヴィクトルはサロンに行くタイプのはまだ未経験って事ね……なら良かった。きっと君も気に入ると思うよ」

アレクセイはあわあわとする俺に、少し落ち着きなよと窘めるような声音で言いながら。

──最初逢った時とはまた違った、威厳と高貴があるが……無感情で冷酷な態度に変えてくるので。

「アレクセイ……アンタってさ……もしかっ……」

「すまないが、私語は厳禁だ。今から向かう場所は、とても残念に思うが……君を最も嫌う人間達しか居ないのだ」

「……」

「だから、ヴィクトルがより安全に、そして安心に過ごせるように。最大限努力して行くから……僕の傍から何があっても離れるなよ。離れたら君を護れなくなると思え」

俺は声には一切感情が籠ってないけど伝えたい思いは、はっきり分かる彼の発言に。

──どうやったらここまで、自分の感情を理性で管理しているんだろうかと……。
そう無粋な事を思ったが、彼がここまでしてくれているのに。
そんな事で時間を潰すなど、俺はそこまで恩知らずで恥知らずではない。

だからこそ……。

「……承知致しました。アレクセイ様、私語は慎み……貴方様のお傍を離れないように致しますので」

教養も望めない境遇なのに、何故かすらすらと水が流れるように言える品のある言葉遣いと仕草で。
気の強い俺から、穏やかで品のある最高位貴族のご子息にみえるように振舞えば。

「それで良い、だが……笑顔は見せなくて良いからな」

アレクセイはそう伝えてから、俺を公爵としてエスコートしながらサロンに連れて行き。
赤い高級そうな絨毯の上に置かれている、純白のアールヌーヴォー様式のテーブルセットが。

──ここから先は庶民は、入れませんっと言っているようで……。

一瞬躊躇してしまったが、すかさず俺の傍に居るアレクセイが。

「……そう言う態度は、ここから先では絶対にするなよ。酷い事が……間違いなく起きるから」

「承知致しました、以後気をつけます」


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