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血を吸うなら
3 流血あり
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涙で顔をぐちゃぐちゃにさせたヴィクトルが戻って来て。
両手でぎゅっと強く握ったナイフを、僕の方に見やすく向けるので。
「ありがとう……本当に、ありがとう……。でも、君にナイフ向けられるとドキっとするよ、ビックリする方で……」
「なっ……!? 別にお、俺はアンタを刺したりしないぞ!! こんな時でも冗談言うなよなバカ!! 心配してんのに……」
「嗚呼……ごめん、ついやっちゃった。君が可愛いすぎるから」
ヴィクトルの言葉に余裕なんか本当はないのに、戯けたように茶目っ気たっぷりに言い返せば。
わぁわぁと泣いていたヴィクトルも、ようやく泣き止んで。
「可愛くなんか……ねぇよ、バカっ……ほら、これ飲んで元気になってね」と、手負いの獣に餌を与える優しき救済者のように、両手で握っていたナイフを義手の右手で持って。
──ちゃんと血が流れる、左手の掌に。
銀色に妖しく輝くナイフを、すっとなぞるように斬りつけると。
赤い液体が、ぷつりぷつりと溢れ出して。
ヴィクトルはビリビリとする痛みに、少し顔を顰めながらも。
血が滴る、左手を。
僕の口元へぶつける勢いで、捧げてくれるので……。
両手でぎゅっと強く握ったナイフを、僕の方に見やすく向けるので。
「ありがとう……本当に、ありがとう……。でも、君にナイフ向けられるとドキっとするよ、ビックリする方で……」
「なっ……!? 別にお、俺はアンタを刺したりしないぞ!! こんな時でも冗談言うなよなバカ!! 心配してんのに……」
「嗚呼……ごめん、ついやっちゃった。君が可愛いすぎるから」
ヴィクトルの言葉に余裕なんか本当はないのに、戯けたように茶目っ気たっぷりに言い返せば。
わぁわぁと泣いていたヴィクトルも、ようやく泣き止んで。
「可愛くなんか……ねぇよ、バカっ……ほら、これ飲んで元気になってね」と、手負いの獣に餌を与える優しき救済者のように、両手で握っていたナイフを義手の右手で持って。
──ちゃんと血が流れる、左手の掌に。
銀色に妖しく輝くナイフを、すっとなぞるように斬りつけると。
赤い液体が、ぷつりぷつりと溢れ出して。
ヴィクトルはビリビリとする痛みに、少し顔を顰めながらも。
血が滴る、左手を。
僕の口元へぶつける勢いで、捧げてくれるので……。
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