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黒き眠り姫を起こすのは(強気受け)

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 ──どこかあの時に死んでしまえば、自分が探している何かに、近づけたのかもしれないと、ほんの少し考えつつも。そんな思いを、何千何倍も飛び越える程の特異な存在であり、人に触れる事も、人に触られる事も大嫌いで。

『みんなか弱いから、そう言って俺を嫌う事で、強くあろうとするんだ』と思って、

 心底嫌いな相手を、好きだと偽って仲良くしている俺の……。

 ──唯一の救いと言わんばかりの存在である彼に、どう感謝を伝えれば良いのか、分からなくて……。
 訳の分からないまま、あの時……。

『なぁ……もしよかったら、俺と一緒に、この街の事件を解決しないか? あと、アンタにお礼もしたいし……』としどろもどろになりながら、彼にそう告白すれば。

『嫌だよ……こんな街の事件なんか、どうでもいいよ。でも、君が僕の恋人になってくれるのならいいよ。あと、お礼なんかいらない。僕は唯……僕の大切なものを全力で護っただけなんだから』

『へぇっ……なっ……何だよ、それ!? ってか……恋人になってくれって? マジかよ?』

『マジだよ。なんで、嘘なんかつかないといけないの? 僕はヴィクトルが、僕の恋人になってくれたら、君が望む通りの事を、全てしてあげるよって言ってるだけだよ。だからさ……君の答えはどっち? はいかYESだけで、答えてよ』

『どっちも、同じ意味じゃねぇかよ!! YESだし、はいだよ。これで、良いだろう? というか、俺なんかで……良いの?』

『君でないと、駄目だよ……だって君は……』

 そんなやり取りを思い出した所で、白いお皿の上に乗った出来立てのホットサンドが、俺の目と鼻の先にドーンと、勢いよく置かれたので。

 俺は猫がビクッと驚くように、体全体を使って驚けば……。

「ヴィクトルは、本当にビビりやすいよな? そんなに他人が怖いのか? まあそんな忌々しい見た目を持ってるし、分からない事はねぇけどよ」

「うるせぇ、俺の外見がなんだよ。そんな見た目だけで、判断する愚かな奴に、アンタも成り下がったんだな? 見損なったぜ、凄くダサい事するんだな、アンタも」

 自分自身では、どうしようも出来ない。

この黒髪蒼目の容姿に向けて、蔑むような悪意しかない言葉に対して。

 俺は抗議するように、長年の怒りと許せない思いを込めた声で、そう言い返せば……。

 にこにこと笑ってお茶らけていたマスターも、これは『マズイ事をした』といった表情で、

「悪りぃ、そういう意図があった訳じゃねぇよ。本当ごめん、凄くデリカシーのない事を言ったな……。傷つけるつもりじゃ、なかったんだ。だけど、そんな風に怒らせちまったから、今回のこれは全部タダでいいよ」と狼狽えて答えるので。

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