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黒き眠り姫を起こすのは(強気受け)
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期待させておきながら、ばっさりと終わらせるように離れていくアレクセイに。
俺は、ドキドキと胸を高鳴らせて……。
(ほんと、意地悪な奴。でも、そんなアレクセイが好きだ……。だって、彼に触れられるだけでも気持ちいいし、他人に触るだけでも気持ち悪くなる俺でも……。何故か、びっくりするぐらい落ち着いて、幸せな気持ちになれるから……)
そう、心の中だけで思いながら……。
近くにある黒のソファに、座って。
「夜まで我慢しろって……良いだろうしてやる。そのかわりちゃんと我慢出来たら、ご褒美くれよな?」
「もちろん良いよ、どんな望みでも叶えてあげる。君の望みなら……人類を全滅させるでも、良いぐらいだよ」
「バカっ!! 何言ってんだよ……そんなの、誰が言うか!! そんな願いより、俺はアンタの髪が、一つに縛れるぐらい伸びて欲しいな」
「……それが、君の願い。良いだろう、ちゃんと出来たら……好きなだけ見せてあげるよ。でも、髪の長い僕なんか、そんなに魅力的じゃないよ」
アレクセイはいつもと変わらない、落ち着いたテンションで言いながらも。
──最後の台詞だけはどこか不安定で、自信がないような声音で言い放つので。
「……そんなことねぇよ!! アンタはどんな姿でも、カッコいいから……。だから、その……髪の長いアレクセイも、今のアレクセイも、俺は気に入ってるからな」
「ヴィクトル……そこは、大好きじゃないかな? まあいいや。そんな事より、今日の仕事はあるのかな? それとも僕がでるほどの仕事は、ないのかな?」
「えっ……あっ……そうだな。その、今日は俺だけで対応できる依頼しかねぇから……。今日はないかも」
俺は申し訳ない顔をしながら、そうアレクセイに告げれば。
彼は残念そうな表情を見せて、はあーと一度だけため息を吐いてから。
「そうか……なら、僕は違う方の仕事に行こうかな。君と一緒に居たくて、いろいろとサボってたから……。今日は、それを片づけてくるよ」
「そうしといてくれ……。というか、本当はそっちのが大事なんじゃねぇの? だってアンタ、公爵様だろう?」
「うん、そうだよ。そうだから……いろいろと、大変だよ。でも昔よりかは、何千何倍も大変じゃないから、僕は平気さ」
アレクセイはあははと笑いながら、事務所の扉の方に向かって行って……。
「だから、心配しないでよねコーティク? あと、今日の夜に僕のマンションにおいで、君が僕に逢いたいって連絡を、夜まで我慢できたら。さっきのお願い、聞いてあげるよ」
「はっ……ちょっと待てよ、最初の条件から変わってるじゃねぇか。まあでも、そんな条件なんか、簡単にクリアできるから。髪の毛長くして、俺を待っておけよな!!」
「はいはい、気の強いコーティクだな。じゃあ、僕は行くから。いい子で待ってるんだよ」
アレクセイはクスクスと笑いながらも、甘くて優しい声音で、願うように言ってから。
事務所を、去って行くので。
「良い子でちゃんと待ってるから……。そんな心配しなくてもいいのにね。あいつ意外と、心配性だよな……。まあでもそういう所、すごく好きだ。うん、好き……俺なんかが好きになっても良いのか、分からないぐらいに……」そう、小さく呟いて。
──この世界で最も敬やまれる容姿を持つ彼と、この世界で最も蔑まされる容姿を持った自分を、ふと比べて……。
ついつい、考えてしまう。
(何故こんな俺を愛し、大好きだと、言ってくれるのか?)という疑問を、出口もないのに、うだうだと思いながら……。
『記憶を失った自分を、唯一助けてくれた人物』が、経営しているカフェ&バーcowardへ。
遅すぎる朝食を、とりに行く為に……。
──この町ではかなり珍しい、番傘のようなデザインの傘を持って。
俺は雨に濡れないように、ゆっくりと歩いて、街へと向かった……。
俺は、ドキドキと胸を高鳴らせて……。
(ほんと、意地悪な奴。でも、そんなアレクセイが好きだ……。だって、彼に触れられるだけでも気持ちいいし、他人に触るだけでも気持ち悪くなる俺でも……。何故か、びっくりするぐらい落ち着いて、幸せな気持ちになれるから……)
そう、心の中だけで思いながら……。
近くにある黒のソファに、座って。
「夜まで我慢しろって……良いだろうしてやる。そのかわりちゃんと我慢出来たら、ご褒美くれよな?」
「もちろん良いよ、どんな望みでも叶えてあげる。君の望みなら……人類を全滅させるでも、良いぐらいだよ」
「バカっ!! 何言ってんだよ……そんなの、誰が言うか!! そんな願いより、俺はアンタの髪が、一つに縛れるぐらい伸びて欲しいな」
「……それが、君の願い。良いだろう、ちゃんと出来たら……好きなだけ見せてあげるよ。でも、髪の長い僕なんか、そんなに魅力的じゃないよ」
アレクセイはいつもと変わらない、落ち着いたテンションで言いながらも。
──最後の台詞だけはどこか不安定で、自信がないような声音で言い放つので。
「……そんなことねぇよ!! アンタはどんな姿でも、カッコいいから……。だから、その……髪の長いアレクセイも、今のアレクセイも、俺は気に入ってるからな」
「ヴィクトル……そこは、大好きじゃないかな? まあいいや。そんな事より、今日の仕事はあるのかな? それとも僕がでるほどの仕事は、ないのかな?」
「えっ……あっ……そうだな。その、今日は俺だけで対応できる依頼しかねぇから……。今日はないかも」
俺は申し訳ない顔をしながら、そうアレクセイに告げれば。
彼は残念そうな表情を見せて、はあーと一度だけため息を吐いてから。
「そうか……なら、僕は違う方の仕事に行こうかな。君と一緒に居たくて、いろいろとサボってたから……。今日は、それを片づけてくるよ」
「そうしといてくれ……。というか、本当はそっちのが大事なんじゃねぇの? だってアンタ、公爵様だろう?」
「うん、そうだよ。そうだから……いろいろと、大変だよ。でも昔よりかは、何千何倍も大変じゃないから、僕は平気さ」
アレクセイはあははと笑いながら、事務所の扉の方に向かって行って……。
「だから、心配しないでよねコーティク? あと、今日の夜に僕のマンションにおいで、君が僕に逢いたいって連絡を、夜まで我慢できたら。さっきのお願い、聞いてあげるよ」
「はっ……ちょっと待てよ、最初の条件から変わってるじゃねぇか。まあでも、そんな条件なんか、簡単にクリアできるから。髪の毛長くして、俺を待っておけよな!!」
「はいはい、気の強いコーティクだな。じゃあ、僕は行くから。いい子で待ってるんだよ」
アレクセイはクスクスと笑いながらも、甘くて優しい声音で、願うように言ってから。
事務所を、去って行くので。
「良い子でちゃんと待ってるから……。そんな心配しなくてもいいのにね。あいつ意外と、心配性だよな……。まあでもそういう所、すごく好きだ。うん、好き……俺なんかが好きになっても良いのか、分からないぐらいに……」そう、小さく呟いて。
──この世界で最も敬やまれる容姿を持つ彼と、この世界で最も蔑まされる容姿を持った自分を、ふと比べて……。
ついつい、考えてしまう。
(何故こんな俺を愛し、大好きだと、言ってくれるのか?)という疑問を、出口もないのに、うだうだと思いながら……。
『記憶を失った自分を、唯一助けてくれた人物』が、経営しているカフェ&バーcowardへ。
遅すぎる朝食を、とりに行く為に……。
──この町ではかなり珍しい、番傘のようなデザインの傘を持って。
俺は雨に濡れないように、ゆっくりと歩いて、街へと向かった……。
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