上 下
3 / 17
黒き眠り姫を起こすのは (健気受け)

3

しおりを挟む
 ──ふよふよと、自分の周りに浮いているアキダコ達に。

「アキダコちゃん達、純米酒を持ってきてください。あと盃も忘れずにですよ」と、
優しく命令し。

 その光景をずっと見つめていたランゼルトに、愛情を込めて作ったその二つを、
手渡せば……。

「ありがとう、アキツシマ。そして、アキダコ達も有難う」

「いえいえ、滅相もありません」

「お前こんな時まで……そういう態度しなくても、良いのだが? まあそれが、お前なのだから仕方なしか。つまらない事を言ったな……」

 ランゼルトはブツブツと文句を言うように呟きながら、受け取ったばかりの皿から、おにぎりを一つ右手で掴んで。

 ──パクリと口に入れるのではなく、小さくちぎってから、口に入れるスタイルで食すので……。

「ランゼルト様、パンみたいに食べなくても、良いのですよ?」

「そうなのか!? では次のは、パクッとかじるスタイルで頂こう。あと、このお酒もキリッとして美味いな。やはり、アキツシマの管理する地のお酒は、どれも美味しい」

「ちょっとランゼルト様ったら、そんなお世辞言わないでくださいよ。ですが、ありがとうございます……。ランゼルト様の為に、造ったお酒なので……。本当に嬉しくて、心が踊ります」

 にこやかな笑みを浮かべつつも、どこか恥じらうように口元に手をあてて、アキツシマはそう答えるので。
 ランゼルトはそんな愛らしい仕草に、ドキッとしてしまい。

 最愛の双子の弟─セレンゼルにかけられた、何度生まれ変わろうとも続く……。

『愛の呪い』の影響で、思わず。

「アキたんっ、きゃわいすぎる……。僕、君をペロペロしたい」と、人格が崩壊したレベルのデレっとした表情を見せながら、隣に座っているアキツシマを……。

──ギュッと強く抱きしめて、そのまま勢いに任せて地面に押し倒してしまうので。

「ちょっと!! いきなり、それはダメですよ!!」と、アキツシマはそう怒れば。

「ダメなの? 本当に……駄目なのか?」

「……駄目では、ないですよ。ですが……」

「なら良い、ですがも……いらないから。このまま、ギュッと抱きしめさせて」

 突然の事に驚くアキツシマに、ランゼルトは絶対にいいえとは言わさないような口調で、言い放つので。

「分かりました。このままアキを離さないでくださいよ? 例えどんな事があろうとも、そして、何度生まれ変わろうとも……。この桜の下で、お花見しましょうね」

「嗚呼、約束しよう。僕がどんな状態になろうとも……。必ず、連れて行くさ」

「絶対にですよ!! 絶対にですからね? 例え、どんな事があっても……。いえ、私が私ではないモノになってしまっても……。桜の話をしたら、必ずこの場所に連れて来てくださいね」

「嗚呼、絶対に守るよ。例えアキツシマが……アキツシマじゃなくても、僕は『この星の生命を、管理してる者』だから。どんな姿でも間違えないし、必ず連れて来れるから……。だから、キスしていい?」

 ランゼルトは『そう心配する事なんて、ないぞ』と、言うかのような声音で答えながら、アキツシマにキスをしようとするので……。

「したければどうぞ、ですが本当に、絶対に守ってくださいよ。もう嫌なんです、幼い私との思い出を……。ランゼルト様に、忘れられた身としては。怖くて、不安なんですよ……。だから、何度も……お願いしてしまいます。ごめんなさい、これだけはお許しを……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられた王の生まれ変わりと白銀の騎士

ありま氷炎
BL
十四年前、国王アルローはその死に際に、「私を探せ」と言い残す。 国一丸となり、王の生まれ変わりを探すが見つからず、月日は過ぎていく。 王アルローの子の治世は穏やかで、人々はアルローの生まれ変わりを探す事を諦めようとしていた。 そんな中、アルローの生まれ変わりが異世界にいることがわかる。多くの者たちが止める中、騎士団長のタリダスが異世界の扉を潜る。 そこで彼は、アルローの生まれ変わりの少年を見つける。両親に疎まれ、性的虐待すら受けている少年を助け、強引に連れ戻すタリダス。 彼は王の生まれ変わりである少年ユウタに忠誠を誓う。しかし王宮では「王」の帰還に好意的なものは少なかった。 心の傷を癒しながら、ユウタは自身の前世に向き合う。 アルローが残した「私を探せ」の意味はなんだったか。 王宮の陰謀、そして襲い掛かる別の危機。 少年は戸惑いながらも自分の道を見つけていく。

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

台風の目はどこだ

あこ
BL
とある学園で生徒会会長を務める本多政輝は、数年に一度起きる原因不明の体調不良により入院をする事に。 政輝の恋人が入院先に居座るのもいつものこと。 そんな入院生活中、二人がいない学園では嵐が吹き荒れていた。 ✔︎ いわゆる全寮制王道学園が舞台 ✔︎ 私の見果てぬ夢である『王道脇』を書こうとしたら、こうなりました(2019/05/11に書きました) ✔︎ 風紀委員会委員長×生徒会会長様 ✔︎ 恋人がいないと充電切れする委員長様 ✔︎ 時々原因不明の体調不良で入院する会長様 ✔︎ 会長様を見守るオカン気味な副会長様 ✔︎ アンチくんや他の役員はかけらほども出てきません。 ✔︎ ギャクになるといいなと思って書きました(目標にしましたが、叶いませんでした)

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

処理中です...