命の質屋

たかつき

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ヤバいかも

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 ◇朋美side◇
 
 結局、明け方まで香菜と二人で喋り通して、電池が切れたように寝たのだろう。最後の記憶は曖昧だ。

 ――ピロン。ピロン。
 
「んん……香菜? なんか鳴ってる……」
「スゥー……スゥー……」

 寝てる……よね。今、何時なのだろう。

 ――ピロン。

 あれ? これって、私のスマホの通知音?
 寝ぼけつつもスマホを手に取り、画面を開く。

 AM10:31

 十時半、もうこんな時間なんだ……といっても、六時くらいまで起きてたから、まだ四時間ちょっとしか寝てないや。

 メッセージあり 中西 徹くん

「何だろう? 明日の予定なのですが……? 明日! デート! そうだ、これもう明日の話だよ、急展開すぎるよ!」

 と、大きな声で一人騒いでから、香菜がまだ寝ている事を思い出し、慌てて息を潜める。
 香菜は……一瞬寝息が聞こえなくなったので起きたかと思ったけど、二秒くらいで再び寝息を立て始めた。
 熟睡継続だ。良かった。

 安心してスマホに目をやると『もし宜しければ、明治神宮のアイススケートに行きませんか?』と表示されている。
 加えて『経験が無いので、おかしな部分があった場合には率直に申して下さい。直ぐに訂正しますので』とも書いてある。

「ぐっ……!」

 危なく吹き出すところだった。
 なぜ敬語に? ってツッコミは昨日から何度か入れた記憶があるけど、これまた丁寧すぎるでしょ。
 仕事じゃないんだから。と思いつつ、ニヤける私。
 
 初めての恋愛に失敗して以来、男の人全員見栄っ張りで、経験人数が多ければ多いほど良いと思ってるような遊び人ばかりで、女性の事をアクセサリーか何かと勘違いしてる奴しか居ないと考えてたけど……文面だけでこんなに初心うぶさが伝わってくる事ある?
 明治神宮のアイススケートも、きっと何かを参考にして選んでくれたんだろうなって、伝わってくる。
 私が運動好きな事も考慮してくれたのかも知れない。
 徹くん本人は『僕はあまり運動得意じゃないんだよね』って言ってたのに、凄く私優先で考えてくれたんだね。

 どうしよう。なんだか、泣きそう。

 ▶️アイススケート楽しそう!
 ▶️予定考えてくれてありがとう!
 ▶️(クマネコヤマトの楽しみスタンプ)

 はぁ、全く、私って奴は……。
 まだ付き合ってもない人の優しさで、こんなに心が温かくなるなんて。こんなんだからすぐに騙されるんだよ。
 雑誌にも書いていた。実際もそうだった。
 男の人は付き合うまでは優しくしてくれるけど、付き合い始めると豹変する人が多い、と。
 でも、そんな男の人ばかりじゃない事も知っている。
 だって、別れないで一緒に日々を過ごしている人達も世の中には沢山居るんだから。

 徹くんとなら……。

 はぁ、私、まだ一回遊んだだけなのに、こんなに徹くんの事を……ちょっと、ヤバいかも。
 
 
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