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決められた約束①
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◇朋美side◇
二つのクッションで頭を挟んだ私は、土下座スタイルでソファに突っ伏している訳だけど、耳は神経を尖らせている。
なのに、まだ通知音が聞こえない。
送ってから十分も経っていないのに気にするなんて、面倒な女だと思われるかも知れないし、私らしくない。
大丈夫。誠実そうな人だったし、嫌われていたとしても、きっと返事はくれるから。
シャワーの音が消えた。
お風呂のドアが開いて、足踏みの音がする。
もう身体を拭いてるところかな。早いなぁ。
香菜がシャワーに行ってから二十分も経ってないのに、本当にサッと洗って出てきたんだ。
「ええ? 何してるの?」
「徹くんにメッセージ送ったんだけど、返事がまだ……いや、全然良いんだけどね。返事が来ないから、とりあえず隠れてた」
「あははは! 朋美もそういうタイプなんだ? 意外だねぇ。可愛い可愛い!」
「だって! こういうの久しぶりだし!」
「うんうん。良いんじゃない? それならさ、先にシャワー行っといでよ! あがる頃には返事来てるかもだし」
「だから、別に焦ってはないんだけど」
「はいはい。見といてあげるから!」
結局、香菜に言われるがままにお風呂場へと押しやられてしまった私は、悶々とする気持ちを切り替えるべくシャワーを浴びる事にした。
不思議な男の人だったな、徹くん。
真面目そうなのに、何故だか一挙手一投足が面白可笑しいし、頼りなく見える時もあるのに、皆の行動を仕切れるリーダーっぼい一面もあった。
他の人を持ち上げて、自分の事を下に言う癖があるのが少し気になったけど、どこか自信もありそうで。
本当に不思議な魅力のある人だったな。って! 今日初めて会ったクセに何を分かった気になってるの、私は。
こんなんだから、直ぐに相手を信じて騙されるんだよ。
頭を洗う指に自然と力が入る。
――トントン!
突然ドアを叩く音に、背中はビクンと反応した。
「来たよ! 返事!」
「えっ?」
シャワーの音が煩かったので、少し水圧を緩める。
「良かった、安心しました。こちらこそありがとう。めちゃくちゃ楽しかったです。ってさ!」
じゃあ、返事が来たら教えてね。とは言ったけど、勝手にグイグイ友達のスマホを見ちゃう辺り、香菜っぽいなと思ったけど、安堵が勝ったお陰で怒りは湧かない。
「そっか! 良かった!」
安心して洗髪を終えた私が身体を擦り始めた時、再びトントンとドアを叩く音が聞こえると共に、香菜が言った。
「もし良ければ、また誘っても良いですか? ってさ!」
――ゴン!
「えっ? 朋美? 大丈夫?」
「ご、ごめん、ちょっと壁に頭ぶつけちゃった」
「壁に!?」
驚きと嬉しさで、思わず壁を頭突いてしまった。
香菜の隣の部屋の人、夜更けにすみません。
「えっと、洗い終わったら返信するから、置いといて」
「おっけー! 嬉しい?」
「そ、そうだね。嬉しい、ね」
「おっけー!」
おっけー? 何だか嫌な予感がするけど、まずは早くシャワーを終わらせちゃおう。
二つのクッションで頭を挟んだ私は、土下座スタイルでソファに突っ伏している訳だけど、耳は神経を尖らせている。
なのに、まだ通知音が聞こえない。
送ってから十分も経っていないのに気にするなんて、面倒な女だと思われるかも知れないし、私らしくない。
大丈夫。誠実そうな人だったし、嫌われていたとしても、きっと返事はくれるから。
シャワーの音が消えた。
お風呂のドアが開いて、足踏みの音がする。
もう身体を拭いてるところかな。早いなぁ。
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「ええ? 何してるの?」
「徹くんにメッセージ送ったんだけど、返事がまだ……いや、全然良いんだけどね。返事が来ないから、とりあえず隠れてた」
「あははは! 朋美もそういうタイプなんだ? 意外だねぇ。可愛い可愛い!」
「だって! こういうの久しぶりだし!」
「うんうん。良いんじゃない? それならさ、先にシャワー行っといでよ! あがる頃には返事来てるかもだし」
「だから、別に焦ってはないんだけど」
「はいはい。見といてあげるから!」
結局、香菜に言われるがままにお風呂場へと押しやられてしまった私は、悶々とする気持ちを切り替えるべくシャワーを浴びる事にした。
不思議な男の人だったな、徹くん。
真面目そうなのに、何故だか一挙手一投足が面白可笑しいし、頼りなく見える時もあるのに、皆の行動を仕切れるリーダーっぼい一面もあった。
他の人を持ち上げて、自分の事を下に言う癖があるのが少し気になったけど、どこか自信もありそうで。
本当に不思議な魅力のある人だったな。って! 今日初めて会ったクセに何を分かった気になってるの、私は。
こんなんだから、直ぐに相手を信じて騙されるんだよ。
頭を洗う指に自然と力が入る。
――トントン!
突然ドアを叩く音に、背中はビクンと反応した。
「来たよ! 返事!」
「えっ?」
シャワーの音が煩かったので、少し水圧を緩める。
「良かった、安心しました。こちらこそありがとう。めちゃくちゃ楽しかったです。ってさ!」
じゃあ、返事が来たら教えてね。とは言ったけど、勝手にグイグイ友達のスマホを見ちゃう辺り、香菜っぽいなと思ったけど、安堵が勝ったお陰で怒りは湧かない。
「そっか! 良かった!」
安心して洗髪を終えた私が身体を擦り始めた時、再びトントンとドアを叩く音が聞こえると共に、香菜が言った。
「もし良ければ、また誘っても良いですか? ってさ!」
――ゴン!
「えっ? 朋美? 大丈夫?」
「ご、ごめん、ちょっと壁に頭ぶつけちゃった」
「壁に!?」
驚きと嬉しさで、思わず壁を頭突いてしまった。
香菜の隣の部屋の人、夜更けにすみません。
「えっと、洗い終わったら返信するから、置いといて」
「おっけー! 嬉しい?」
「そ、そうだね。嬉しい、ね」
「おっけー!」
おっけー? 何だか嫌な予感がするけど、まずは早くシャワーを終わらせちゃおう。
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