命の質屋

たかつき

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久しぶりの恋愛

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 ◇朋美side◇

 涼太くんに見送られて香菜の家に着いた私は、自分でも信じられないくらい充実感に満ちていた。

 ダンスイベントに向けた練習日の打ち合わせをしようとして香菜に電話したのが一昨日。
 彼氏が自分を置いて友達と旅行に行った、と愚痴る香菜に「彼氏が居るだけマシじゃん。良いなぁ、私も恋愛したいよ」と溢した事から話が膨らみ、涼太くんの友達の徹くんの話しになり、気付けばダブルデート? という所まで発展してしまった。

 話に聞いただけで、出会ってもない人とダブルデートも何も無いだろうと思っていたけど、いざ行ってみると、想像していたよりもずっと楽しんだ私がいる。

「いやいや、疲れたね。楽しかったけど」
「ほんと。疲れたけど、楽しかった! 友達以外とあんなに笑ったの久しぶりかも」
「うんうん。何か良い感じだったもんね。どう? 徹くん。見た目はパッとしないけど、面白いよね」

 香菜のこの評価が私を驚かせた。
 そりゃ香菜にとっては涼太くんが格好良くて、他の人が劣って見えるのは分かるけど、何度も酷評するものだから覚悟していたら、全くそんな事はなかった。

「香菜がみたいに言うから少しドキドキしてたけど、全然良いじゃん。私ああいう感じの人、普通に格好良いと思うよ。好みの問題かもだけど」
「え? 徹くんが? ふぅん。そうかなぁ?」
「ふふ。またそうやって。もう、ちょっと好きになってるんだから、あんまり悪口言わないでね」

 って、ちょっと言いすぎた。
 恥ずかしくなった私はクッションで顔を隠す。
 良い匂いがする。香菜は本当に女子力が高いや。

「おおおお、本当に? それは良かった。正直、徹くんの性格は朋美と相性良いと思ったんだけど、見た目がなぁ……って思ってたんだよね!」
「もう。だからぁ――」
「徹くんもデレデレしてたし、完全好きになってたでしょ! すっごい分かりやすいから徹くん、あはは!」

 確かに分かりやすかった。
 初めて出来た彼氏に浮気され別れて以来、あまりのショックから、どこか男性不信が抜けない自分が居た。
 でも、徹くんを見て、あんなに純粋そうな男の人も居るのだと知って驚いた。

「付き合いたいと思ってくれたかな?」
「思ったね! 絶対に! とりあえずさ、約束したんだから、無事に着いたよメッセージしといたら? 私ちょっとシャワー浴びてくるからさ! メイク落としてサッと流したらすぐ出てくるけど、それまでに送りなよ!」
「え? 私一人で送るの? 待って、ヤバいんだけど」
「ヤバくないから! 私が出たら朋美もシャワー行きな? サッと流すだけでさっぱりするから! メイク落とさないと肌荒れるし、ね!」

 せわしなく行動開始した香菜を見て、女子力高いけど、何だかお母さんみたいと、笑いが込み上げる。
 
 男の人に個人的なメッセージを送るなんて、久しぶりでドキドキするけど、早くしないと徹くんが寝ちゃうかも知れないもんね。
 
 文章は、シンプルで良いかな。
 送信を押した私は、スマホをビーズのクッションに放り投げ、ソファに突っ伏した。
 
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