命の質屋

たかつき

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夢かも

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 賃貸アパートの我が家に着いて間もなく
 ▶こちら無事に香菜の家に着きました。
 ▶今日はありがとう!
 ▶楽しかったよ!
 というメッセージが朋美ちゃんから届いた。

 それを見た僕が興奮を抑えきれず、声を殺して布団の上で悶えたのは言うまでもないでしょ。
 
 ほぼ同時刻に
 ▶反応悪くなくて良かったな。
 ▶メッセージ来たらちゃんと返せよ。
 ▶盛り上がってるうちに次のお誘いした方が良いぞ。
 ▶俺は寝る。
 というメッセージも涼太から立て続けに送られてきた。

 そっちは
 ◀うん、分かった!
 ◀ありがとう!
 ◀おやすみ。
 と直ぐに返したが、朋美ちゃんからのメッセージは開いたまま何と返そうか悩んでいる。もう十分経つ。
 僕がメッセージを見たのは朋美ちゃんも分かっているのに、あんまり返事が遅いと嫌われてしまうかもしれない。

 返事の一つくらいで悩んでどうする。
 覚悟を決めろ、僕! 

 ◀良かった。安心しました!
 ◀こちらこそありがとう!
 ◀めちゃくちゃ楽しかったです!

 文字を打つ指が震える。
 書いては消してを繰り返しながら、やっと送った文字がこれだ。コミニケーション下手か。
 せめてもう一文、駄目で元々、当たって砕けろ!

 ◀もし良ければ、また誘っても良いですか?

 しまった。良ければ良いですか? って、頭痛が痛いんですか? みたいな文章になってしまった!
 どうしよう! 馬鹿みたいじゃないか!
 訂正の文章を送った方が良いかな。な訳あるか。
 ああああ、もっと考えて送るべきだった。あああ。

 ▶もちろん。明後日、どうですか?
 ▶今度は二人で。笑

 えーと。はい? なんて書いてある?
 モチロン、アサッテ、ドウデスカ?
 明後日って、明日の次の日の事でしょ?
 あと五分くらいで明日だから、五分二十四時間後が明後日って事? それって、どういう事?
 
 コンドハ、フタリデ。
 え? 僕の目がバグってる?
 そんな夢みたいな事ある訳……え、夢か? これ。
 サウンド・ワンではしゃいで疲れてたし、家に着いた途端に寝落ちしたんじゃないのか?
 だとしたら、朋美ちゃんのメッセージに返事もしないで寝ている事になる! それはマズイ!
 どうにか目を覚まそうと1LDKワンエルディーケーの我が家を走り回った僕は、最終的に足がもつれて転び、テーブルの角に顔をぶつけた。目の下だ。
 とんでもなく痛い。つまり、夢じゃない!

 ▶もちろん。明後日、どうですか?
 ▶今度は二人で。笑

 夢じゃないのに、確かにそう書いてある。

「やったぁ!」

 思わず叫び、時間を思い出して焦り黙る。
 嬉しい! 嬉しい嬉しい嬉しい! 明後日の僕は絶対にパニックになってるだろうけど、嬉しすぎる!

 あっ、返事をしなきゃ。
 また十分も経ってるじゃないか。
 ここは、正直に書こう。

 ◀嬉しすぎて、混乱していました。
 ◀明後日、もう明日だけど、宜しくお願いします。
 ◀とても楽しみです。 

 ▶どうして敬語。笑
 ▶じゃあ、また明日!
 ▶おやすみなさい。

 ◀おやすみなさい。 

 ああ、あああ涼太に電話した方が良いかな?
 いや、寝るって言ってたし、流石に止めとくか。
 きっと朋美ちゃんの横では香菜ちゃんがニヤニヤしてるんだろうな。でも、香菜ちゃんが居なかったらこんな出来すぎな返事は無かったんだろうな、とも思う。
 ありがとう、香菜ちゃん。

 はぁ、ドキドキする。
 
 こうして僕は、高鳴る心臓とズキズキと痛む目の下を感じながら、寝付けぬ夜を過ごすのだった。
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