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青春してる
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急に重くなった足を押し進め外に出ると、海から吹く心地良い風で、幾分か心は晴れた。
こういう時に前向きになれないのが僕の悪いところなんだろうなぁと、しみじみ思う。モテない原因ってやつだ。
超能力を得て、少し特別な人間になったつもりでいたけれど、人の中身なんて、そう簡単には変わらないんだな。
「鴨川って、初めて来たけど良い所じゃん!」
「ああ、ね。僕は小さい頃にここの海に来たことあるけど、楽しかった記憶があるよ」
こんな時でも平常運行。さすが涼太だ。
彼女のいる男は、こんなに余裕があるのか。
一緒に居る友人が急に天恵を授かった上に、その天恵が物騒な能力だったのに、いつもと何ら変わらぬ顔をしている。
結局、僕らは目的地を決めずに歩き出した。
ホテルから海沿いを南下して仁右衛門島が見える広場にキッチンカーを発見し、そこを目的地とした。
ちなみに、仁右衛門島って思ってたよりずっと小さいなぁ、なんて思いながら見ていたのは、実は仁右衛門島ではなく、ただの名も無い半島だった。
後日気づいて二人で笑ったのは、また別のお話だ。
キッチンカーには唐揚げハンバーガーなる食べ物や、タコ焼きが売られており、僕らはタコ焼き一パックと、それぞれの飲み物を購入した。
男二人でタコ焼き一パックは何だかみみっちい注文になってしまったけど、ここで盛大に食べてしまっては夕飯を食べるのが苦しくなってしまうので、恥を忍ぶ。
「あそこに座って食おうぜ」
「うん」
僕達はヤシの木なのかパイナップルの木なのか、はたまた全く別の木なのか分からないが、南国っぽい木の下に腰を下ろして一休みする事にした。風が気持ち良い。
タコ焼きは想像の一・三倍くらい美味しかった。
隣が女の子だったらもっと美味しく感じたのかな?
「どうした相棒、なんか悩み事かい?」
涼太がやたら芝居がかった尋ね方をする。
まさか、顔に出てた? いやいや、そんな訳ない。
「え? どうして?」
「かぁっ、これだから童貞は。そんな分かり易く誤魔化すなよ。どうしましたか? ここでは言えない事ですか?」
くそっ。童貞だと嘘も吐けないってのか。んな馬鹿な。
「童貞って言うな。ダブルデートが気になってただけだし」
「えっ? そっち? あはははは! お前、面白すぎ!」
「笑うなよ。正直言うと、楽しみな気持ちもあるんだけど、自信が無いから不安とか緊張が勝っちゃってさ。仮に仲良くなれたとしても、その先どうして良いのか分からないし」
「はっははは! 謎に真面目か! そんなの、相手の女の子だって同じだろ。香菜の事だから徹のことも話してるだろうし、それでも会いたいって言ってくれてるんだから」
「もし、本物の僕を見た途端ガッカリしたらどうしよう」
「それならそれで良いだろ。見た目だけで嫌うような人なら、お前の方から断ればいいんだよ。気楽にいけ」
少し上から目線の気もするけど、確かに一理ある。
僕が外見より内面を気にするのと同じで、相手もあまり外見を気にしないタイプなら……いや待てよ、なぜ内面ならイケると思った! 僕は内面だってへなちょこだぞ!
「性格も引かれたらどうしよう」
「面倒くせぇな! 今みたいな感じでいったら百パーセントフラれるけど、普通にしてれば問題ないって! 保証する」
「……分かった。ありがとう」
「良いってことよ、青春だもんな。戻んぞ」
青春してるか。確かに、折角作ってくれた貴重な機会なんだから、結果砕けるとしても行くべきだ。
だって、彼女が欲しいから!
僕らはまた海沿いを歩き、ホテルを目指した。
こういう時に前向きになれないのが僕の悪いところなんだろうなぁと、しみじみ思う。モテない原因ってやつだ。
超能力を得て、少し特別な人間になったつもりでいたけれど、人の中身なんて、そう簡単には変わらないんだな。
「鴨川って、初めて来たけど良い所じゃん!」
「ああ、ね。僕は小さい頃にここの海に来たことあるけど、楽しかった記憶があるよ」
こんな時でも平常運行。さすが涼太だ。
彼女のいる男は、こんなに余裕があるのか。
一緒に居る友人が急に天恵を授かった上に、その天恵が物騒な能力だったのに、いつもと何ら変わらぬ顔をしている。
結局、僕らは目的地を決めずに歩き出した。
ホテルから海沿いを南下して仁右衛門島が見える広場にキッチンカーを発見し、そこを目的地とした。
ちなみに、仁右衛門島って思ってたよりずっと小さいなぁ、なんて思いながら見ていたのは、実は仁右衛門島ではなく、ただの名も無い半島だった。
後日気づいて二人で笑ったのは、また別のお話だ。
キッチンカーには唐揚げハンバーガーなる食べ物や、タコ焼きが売られており、僕らはタコ焼き一パックと、それぞれの飲み物を購入した。
男二人でタコ焼き一パックは何だかみみっちい注文になってしまったけど、ここで盛大に食べてしまっては夕飯を食べるのが苦しくなってしまうので、恥を忍ぶ。
「あそこに座って食おうぜ」
「うん」
僕達はヤシの木なのかパイナップルの木なのか、はたまた全く別の木なのか分からないが、南国っぽい木の下に腰を下ろして一休みする事にした。風が気持ち良い。
タコ焼きは想像の一・三倍くらい美味しかった。
隣が女の子だったらもっと美味しく感じたのかな?
「どうした相棒、なんか悩み事かい?」
涼太がやたら芝居がかった尋ね方をする。
まさか、顔に出てた? いやいや、そんな訳ない。
「え? どうして?」
「かぁっ、これだから童貞は。そんな分かり易く誤魔化すなよ。どうしましたか? ここでは言えない事ですか?」
くそっ。童貞だと嘘も吐けないってのか。んな馬鹿な。
「童貞って言うな。ダブルデートが気になってただけだし」
「えっ? そっち? あはははは! お前、面白すぎ!」
「笑うなよ。正直言うと、楽しみな気持ちもあるんだけど、自信が無いから不安とか緊張が勝っちゃってさ。仮に仲良くなれたとしても、その先どうして良いのか分からないし」
「はっははは! 謎に真面目か! そんなの、相手の女の子だって同じだろ。香菜の事だから徹のことも話してるだろうし、それでも会いたいって言ってくれてるんだから」
「もし、本物の僕を見た途端ガッカリしたらどうしよう」
「それならそれで良いだろ。見た目だけで嫌うような人なら、お前の方から断ればいいんだよ。気楽にいけ」
少し上から目線の気もするけど、確かに一理ある。
僕が外見より内面を気にするのと同じで、相手もあまり外見を気にしないタイプなら……いや待てよ、なぜ内面ならイケると思った! 僕は内面だってへなちょこだぞ!
「性格も引かれたらどうしよう」
「面倒くせぇな! 今みたいな感じでいったら百パーセントフラれるけど、普通にしてれば問題ないって! 保証する」
「……分かった。ありがとう」
「良いってことよ、青春だもんな。戻んぞ」
青春してるか。確かに、折角作ってくれた貴重な機会なんだから、結果砕けるとしても行くべきだ。
だって、彼女が欲しいから!
僕らはまた海沿いを歩き、ホテルを目指した。
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