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依頼消化編
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しおりを挟む「そこで俺に話を振るのか?」
「あなたに振らなくて誰に振るって言うんですか?」
「それもそうだが……。とりあえず、先に名乗っておく。ここのギルドマスターのグランだ。ギルマスでもなんでも好きに呼んでくれ。」
ギルマス、改めグランがそう言うので、リッカとタイチも習って名を名乗る。やはり名だけでヤマトの出身だというのが分かるのか、ほう……と感心したように頷いていた。
もちろんリッカも、ギルマスをしているグランがただの冒険者だとは思っておらず、どこかアカデミーの教師である同郷のカガチを思い出すような雰囲気に納得したようにくふんと笑みを浮かべる。
「グランさん、これからよろしくお願いしまーす。」
「ああ。それにしてもその気配は龍種か?リッカの耳についているだろう?」
「へぇ……分かるんですね。」
「まあな。龍種とは何回かやりあった。しかし、アイツらは滅多にお気に入りを作らないはずだが……期待できそうだな。」
「コラコラコラ、ギルマスもリッカくんもバチバチしない!ギルマス、リッカくんって案外喧嘩っ早いんだから煽らないでくださいよ?」
慌てたようにノアが間に入ったことで、また一触即発かと構えていたタイチは気を緩めた。リッカと一緒にいてはいくら命があっても足らないと感じる。すぐに喧嘩を買うのだ。周りの視線やらは度を越えなければ無視できるのに、少し機嫌が悪かったり仲間を侮辱されたりすると途端に我慢できない。まあそれがリッカのいいところでもあるのだが、毎回毎回巻き込まれる身にもなってほしいとタイチ届かぬ願いを抱く。
そんなタイチの想いも知らず、リッカはごめーん、と軽く謝るだけだった。それがリッカの性格だと受け入れてしまったノアはしょうがないなと言わんばかりに苦笑いだ。
「タイチもごめんね?」
「……なんだ急に。」
「いっつも巻き込んじゃうもんね?だからだよ。」
「……もう慣れたからいいよ。」
「そっか。」
他人を気にかけていないかと思えばこれなのでタイチはリッカを憎めないのだ。はあ、と小さくため息をつくと、横にいたウルやタイチの肩の上にいたローリアが鼻をぐいぐいと押し付けて慰めてくれた。ちなみにギルドマスターの部屋へ移動しながらのことである。
程なくして他とは少し趣の異なる扉が見えてくる。装飾の豪華さや部屋から漂う雰囲気から、この部屋がグランの部屋なのだろう。リッカがあれ?と指をさすとグランもノアも頷いてくれた。
「……立派だねぇ。」
「ギルマスの部屋だからね。僕も最初に見たときは派手……立派だなぁって感心しちゃったよ。」
「おい、派手って言ってるの聞こえてるからな。……俺はもう少し地味でもいいのではと言ったんだがな。トップなんだからここまでして当たり前だと押し切られてしまった。」
「……ギルドマスターってもしかして押しに弱いんですか?」
「お、タイチくん鋭い!ギルマスってば優しいし、小さい子とか放っておけないからすーぐ言うこと聞いちゃうんですよねー?」
「うるさいぞ、ノア。」
気まずそうにノアへ反論するが、やはりどこか弱弱しい。ノアが言っていることは大体正しいのだろう。だが、誰もそのことを追求することなくグランの部屋に到着した。
グランが最初に扉をくぐり、後にノアとリッカとタイチ、そして従魔たちが続く。中は扉と違ってとても豪華である、とは言い難いがそれなりに居心地のよさそうな空間であった。おお、と感嘆の声を上げながらノアもリッカも遠慮なしに備え付けてあるソファに沈み込む。そんな二人を見てタイチも遠慮がちに座った。
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