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依頼消化編
ギルド
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ノアにいろいろとお店の案内を受けながらたどり着いたのはこの街の中でも一、二を争う大きさであろう建物だった。入り口であろう扉の上には””ギルド”の文字。どうやらここが目的地らしい。ギルドの前には見るからに冒険者だろう人たちが屯しているし、外から見えるギルドの中ではいろいろな恰好の冒険者たちが壁にたくさん貼り付けてある用紙を見ながら思案している。まさに、あるべきギルドの姿と言っても過言ではない。
感心したようにリッカが感嘆の声を上げているのを見て、ノアは満足そうにうなずいた。
「ここ?」
「そうだよ。中々大きいでしょ?ここの受付で依頼の詳しい説明を受けるんだ。」
「へぇ……。」
「なあ、冒険者にテイマーって少ないのか?従魔を連れている人をあまり見かけないんだが……。」
タイチが首を傾げながらノアへ聞く。確かにギルドの中にも外にも従魔を連れている人はいない。だからこそ気になったのだろう。テイマーはある意味従魔を連れているというのが目印のようなものだからだ。ちなみにノアは例外である。従魔は基本的にテイマーしか扱えない。なのに、ギルドにいる冒険者の誰も連れていないときた。こうなればテイマーがマイナー職なのかと疑ってしまってもしょうがないだろう。
しかし、ノアはそれを聞いて笑いながら否定した。
「確かに連れている人はいないけど、それはみんな街の外に待機されているからなんだよ。中には街に入れるにはちょっと問題のある従魔を連れている人もいるだろうしね。外に従魔用の厩舎が設置してあるんだ。」
「フェリやウルみたいに身体のサイズを小さくとかできないの?」
「それこそ、その子たちだからできるんだよ。身体を小さくするなんて、魔力制御に優れていないとできないんだから。」
「そういうことだったのか……じゃあマイナー職ってわけではないんだな?」
「まあ魔法使いや剣士とかよりは少ないけど、それなりにいるよ。」
ノアの説明に納得したのだろう。それ以上タイチが何か質問を投げかけてくることはなかった。確かに大物の魔獣を従えていたりすると街へは入れられないだろう。小さくできない限りは。そもそも検問所で仕訳けられるらしい。どの従魔は通して良くて、どの従魔が厩舎で待機になるのかというのは。
「どこもそうやって対策されているんだねぇ……。」
「アカデミーは慣れる意味も込めて、いいんだけどね。流石に一般人がいるところではちゃんと管理しないとパニックになっちゃうでしょ?」
「それもそうだな。」
「さ、話もそれまでにしてとりあえずギルドの中に入るよ?」
そう言うとノアはギルドの扉をくぐった。ついて行くようにリッカとタイチもギルドへ足を踏み入れる。ギルドは、外から見ていた時も感じていたが何か不思議な雰囲気がした。
ノアはリッカ達を休憩スペースのような場所へ連れて行き、そこで待っていてとソファへ座らせると受付へ向かう。受付は一つ一つが少し狭い作りとなっているため三人で一気に説明を受けることは難しいと判断したのだろう。おそらくノアが先に説明を聞いてきてくれるのか、ギルドスタッフを連れて来てくれようとしているのかもしれない。
リッカはそんなノアを眺めながら神獣たちや、フェリの頭を撫でる。
「いろんな人がいるね。装備がしっかりしててあの人とか、すごく強そう。」
『いいえ、この中でお母様に敵うものなどいませんわ。』
『お母さんの魔力量は群を抜いて多いからね。』
「魔力量と実力は比例しないでしょ?経験の差もあるんだし……。」
『そもそも魔獣たちは正気を失わない限り、ままに手なんて出さないよ?』
『だから怪我もしねーってな!』
「それは言えてるな。」
「ちょっとタイチまで!」
魔獣に好かれるということは人間には常時敵対状態であるはずがリッカの場合常時友好状態であるということ。正気さえ失っていなければ龍種の鱗を持っているということもあり、絶対に襲ってこない。ある意味あの課外授業の時の突進牛も正気を失っていた状態と言えるので、条件には当てはまる。
人間からの攻撃でなければリッカが怪我を負う可能性は低いのだ。龍種は、何とも言えないが。
『ちなみにタイチもこの中の方達より多い魔力を保有していますよ。』
「ん?そうなのか?」
「それこそ当たり前だよ。ウルを狼から天狼に進化させたんだから。進化って、早々するものじゃないっていうのはタイチも知ってるでしょ?」
「まあ、そうだが……。」
『りっかもったいちもすごいんだね!』
まるでお互いが自分は普通ではないはずがないとでも言わんばかりの言い方をしていたがどっちもどっちである。そもそもヤマトの生まれというだけで周りからは奇異の眼で見られがちであるのだ。フェリの言葉に自分たちがしょうもないことで言い合っていたということに気づいたのか、リッカとタイチはどちらからともなく声を上げて笑い始めた。
「くふふっしょうもないね。」
「ははっ……そうだ、しょうもないな。」
「ほんと、しょうもない……って言うか、ノアいなくない?」
「あれ?本当だ。さっきまであそこの受付にいたと思ったんだがな……、」
くだらないことで笑い合っているうちにふとリッカは気づいた。今まで受付にいたはずのノアがいなくなっていることに。こちらに戻ってきているということもないし、本当に姿が見えなくなっているのだ。首を傾げながら辺りを見回してもノアの姿はない。どうしてだろうねー、と神獣たちにも声をかけていたのだが、彼らは別の方向を見て唸り声をあげていた。
「ん、どうしたのみんな、」
そうリッカが彼らに尋ねようとすると、それを遮るかのように荒々しい声がリッカ達へ投げかけられる。
「おいおいおい!ここは子供の来るところじゃねぇんだぞ!!早くママんとこに帰んな!!!」
声の方向をちらりと見れば身体の大きな男がしびれを切らしたようにこちらへ歩いてくるところだった。
「あー……どこにでもこういう輩はいるんだねぇ……。」
リッカの口からは呆れた声しかでないようだった。
感心したようにリッカが感嘆の声を上げているのを見て、ノアは満足そうにうなずいた。
「ここ?」
「そうだよ。中々大きいでしょ?ここの受付で依頼の詳しい説明を受けるんだ。」
「へぇ……。」
「なあ、冒険者にテイマーって少ないのか?従魔を連れている人をあまり見かけないんだが……。」
タイチが首を傾げながらノアへ聞く。確かにギルドの中にも外にも従魔を連れている人はいない。だからこそ気になったのだろう。テイマーはある意味従魔を連れているというのが目印のようなものだからだ。ちなみにノアは例外である。従魔は基本的にテイマーしか扱えない。なのに、ギルドにいる冒険者の誰も連れていないときた。こうなればテイマーがマイナー職なのかと疑ってしまってもしょうがないだろう。
しかし、ノアはそれを聞いて笑いながら否定した。
「確かに連れている人はいないけど、それはみんな街の外に待機されているからなんだよ。中には街に入れるにはちょっと問題のある従魔を連れている人もいるだろうしね。外に従魔用の厩舎が設置してあるんだ。」
「フェリやウルみたいに身体のサイズを小さくとかできないの?」
「それこそ、その子たちだからできるんだよ。身体を小さくするなんて、魔力制御に優れていないとできないんだから。」
「そういうことだったのか……じゃあマイナー職ってわけではないんだな?」
「まあ魔法使いや剣士とかよりは少ないけど、それなりにいるよ。」
ノアの説明に納得したのだろう。それ以上タイチが何か質問を投げかけてくることはなかった。確かに大物の魔獣を従えていたりすると街へは入れられないだろう。小さくできない限りは。そもそも検問所で仕訳けられるらしい。どの従魔は通して良くて、どの従魔が厩舎で待機になるのかというのは。
「どこもそうやって対策されているんだねぇ……。」
「アカデミーは慣れる意味も込めて、いいんだけどね。流石に一般人がいるところではちゃんと管理しないとパニックになっちゃうでしょ?」
「それもそうだな。」
「さ、話もそれまでにしてとりあえずギルドの中に入るよ?」
そう言うとノアはギルドの扉をくぐった。ついて行くようにリッカとタイチもギルドへ足を踏み入れる。ギルドは、外から見ていた時も感じていたが何か不思議な雰囲気がした。
ノアはリッカ達を休憩スペースのような場所へ連れて行き、そこで待っていてとソファへ座らせると受付へ向かう。受付は一つ一つが少し狭い作りとなっているため三人で一気に説明を受けることは難しいと判断したのだろう。おそらくノアが先に説明を聞いてきてくれるのか、ギルドスタッフを連れて来てくれようとしているのかもしれない。
リッカはそんなノアを眺めながら神獣たちや、フェリの頭を撫でる。
「いろんな人がいるね。装備がしっかりしててあの人とか、すごく強そう。」
『いいえ、この中でお母様に敵うものなどいませんわ。』
『お母さんの魔力量は群を抜いて多いからね。』
「魔力量と実力は比例しないでしょ?経験の差もあるんだし……。」
『そもそも魔獣たちは正気を失わない限り、ままに手なんて出さないよ?』
『だから怪我もしねーってな!』
「それは言えてるな。」
「ちょっとタイチまで!」
魔獣に好かれるということは人間には常時敵対状態であるはずがリッカの場合常時友好状態であるということ。正気さえ失っていなければ龍種の鱗を持っているということもあり、絶対に襲ってこない。ある意味あの課外授業の時の突進牛も正気を失っていた状態と言えるので、条件には当てはまる。
人間からの攻撃でなければリッカが怪我を負う可能性は低いのだ。龍種は、何とも言えないが。
『ちなみにタイチもこの中の方達より多い魔力を保有していますよ。』
「ん?そうなのか?」
「それこそ当たり前だよ。ウルを狼から天狼に進化させたんだから。進化って、早々するものじゃないっていうのはタイチも知ってるでしょ?」
「まあ、そうだが……。」
『りっかもったいちもすごいんだね!』
まるでお互いが自分は普通ではないはずがないとでも言わんばかりの言い方をしていたがどっちもどっちである。そもそもヤマトの生まれというだけで周りからは奇異の眼で見られがちであるのだ。フェリの言葉に自分たちがしょうもないことで言い合っていたということに気づいたのか、リッカとタイチはどちらからともなく声を上げて笑い始めた。
「くふふっしょうもないね。」
「ははっ……そうだ、しょうもないな。」
「ほんと、しょうもない……って言うか、ノアいなくない?」
「あれ?本当だ。さっきまであそこの受付にいたと思ったんだがな……、」
くだらないことで笑い合っているうちにふとリッカは気づいた。今まで受付にいたはずのノアがいなくなっていることに。こちらに戻ってきているということもないし、本当に姿が見えなくなっているのだ。首を傾げながら辺りを見回してもノアの姿はない。どうしてだろうねー、と神獣たちにも声をかけていたのだが、彼らは別の方向を見て唸り声をあげていた。
「ん、どうしたのみんな、」
そうリッカが彼らに尋ねようとすると、それを遮るかのように荒々しい声がリッカ達へ投げかけられる。
「おいおいおい!ここは子供の来るところじゃねぇんだぞ!!早くママんとこに帰んな!!!」
声の方向をちらりと見れば身体の大きな男がしびれを切らしたようにこちらへ歩いてくるところだった。
「あー……どこにでもこういう輩はいるんだねぇ……。」
リッカの口からは呆れた声しかでないようだった。
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